台湾海峡危機政策シミュレーションのフォローアップ

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顧問・元海上幕僚長(元海将) 武居智久

 武居でございます。これから皆さんにシミュレーションの追体験をしていただきます。
 
中国の可能行動
 シナリオの作成に当たって中国の可能行動を次のように仮定しました。まず、中国は可能な限り軍事行動に訴えず、サイバー攻撃、台湾国内に潜り込ませた工作員などを動員して騒擾を起こす。
 しかし、軍事的な衝突に至った場合は、迅速に台湾を奪取し「台湾省」を宣言する。中国政府は、武力侵攻は国内治安問題であると主張し、外国軍隊による介入に反撃する場合は、全て自衛のための武力行使とする。日米安保は極力発動させないように努め、サイバー攻撃、経済制裁、日本国内における不法行動等により厭戦気分を醸成させる。
 それでも米国が台湾防衛のために軍事介入する場合、在日米軍基地やグアム基地、空母機動部隊など軍事目標を攻撃するが、米国本土は攻撃しない。核戦争へのエスカレーションを避けるため、米中は秘密交渉する――こととしました。
 
背景想定
 2022年秋に習近平はかろうじて3選されますが、国内問題等から政権基盤が脆弱化しており、これを挽回するために2024年の台湾総統選に介入する可能性があること。その時は、反国家分裂法に基づいて軍事介入する可能性がある。
 今回のシナリオでは特に、中国がサイバー攻撃をすると仮定し、軍事的に侵攻する約3ヵ月前から台湾、日本、米国のIoT(モノのインターネット)システムにロジカル・ボムを埋め込み、サイバー攻撃に利用する情報を窃取した痕跡を付与しました。
 
4つのシナリオ構成
 1つ目は、中国政府が第3次台湾海峡危機(1995-96年)に類似した状況を長期間継続するシナリオです。
 2つ目は、1961年のベルリン危機型で、中国が台湾を物理的、情報的に隔離して、対中国宥和政権の誕生を作為する。
 3つ目は、1944年のノルマンディー作戦型で、中国が十分に準備を整えてから台湾本島に上陸するというものです。
 4つ目は、台湾海峡紛争の終結過程をシミュレートし、終戦工作について日本セルに考えてもらう内容です。
 いずれも独立したシナリオで、政策提言を引き出すために作っており、生起する蓋然性は考慮していません。