ウクライナ戦争から日本は何を学ぶのか

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政策提言委員・元航空支援集団司令官 織田邦男

 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略戦争は未だ出口が見えない。ロシアによる無差別攻撃で多くの無辜の民が傷ついている。生存者の多くも電気、水、食料を断たれ、飢えと寒さに苦しんでいる。国民の4分の1が家を離れたという。この悲惨なウクライナ戦争から我々は何を学ぶべきなのだろう。
 
誰も止められない戦争が起こり得る
 この戦争で明確になったことは、国連の常任理事国が、核の脅しを背景に、力による現状変更、つまり侵略戦争を始めれば誰も止められないということだ。国連は全く無力、無能な醜態を晒している。我が国の近くにも、もう1つの独裁国家、核大国、そして常任理事国である中国がある。習近平中国国家主席は、台湾統一を国家目標に掲げ、武力統一も否定していない。台湾有事は日本有事である。核をちらつかせながら台湾の武力統一を決行する可能性もある。決して他人事ではない。何より、こういう20世紀型戦争が、今なお我が国周辺でも起こり得るということは、再認識しておかねばならない。
 
力の無い外交は無力
 「力の信奉者」に対し、力の無い外交は無力であることを、今更ながら見せつけられた。ロシアのプーチン大統領や習近平主席など、独裁者に共通しているのは、「力の信奉者」であることだ。彼らは「力」以外は信じない。ウクライナのゼレンスキー大統領は、今でこそ「戦う指導者」として英雄になっているが、ロシアの侵攻直前まで、外交で解決すると公言していた。
 「力の信奉者」と対峙するには、先ずは「力」で圧倒されないことだ。同盟国もなく、ロシアの約十分の一の軍事力しか持たないウクライナが外交交渉を挑んでも、既に侵略を決心したプーチン氏は聞く耳を持つわけがない。力の無いウクライナが1国でロシアと「外交交渉のみで対処」することなど、土台無理な話であった。
 
情報戦は戦局全体に影響を及ぼす
 情報戦が大きく戦況を左右することが分かったのも、この戦争の特徴の1つである。昨年10月頃から、米国の情報機関はロシアの動向を正確に読んでいた。米国のバイデン大統領は、機微にわたる情報を積極的に公開することにより、プーチン氏の偽旗作戦(嘘やデマにより作戦を有利に展開させる)の無効化を図ろうとした。米国の情報戦はプーチン氏の侵略意図を抑止することはできなかったが、偽旗作戦を一定程度無効化するのには成功した。
 昨年11月、ロシアの不穏な動きを察知したバイデン氏は、「ロシアは計画外軍事演習を計画しており、重大な挑戦」と警鐘を鳴らした。