平和安全法制は戦争法なのか

千葉科学大学教授  佐藤庫八

はじめに
 平成27年9月30日に公布された平和安全法制が、本年3月29日に施行されることになった。
 本法制は、法案が国会に提出される前から話題を呼んでいた。26年7月1日に閣議決定した限定的な集団的自衛権の行使を前提とした法案であること、PKOで活動している自衛官の武器使用について従来禁止していた駆け付け警護、宿営地の共同防護、任務遂行を妨害された場合における武器使用を認める法案であること、在外邦人等の輸送から救出まで可能とする法案であることなどである。
 しかし、話題を呼んだのは、これらの法案の内容そのものより、安倍内閣総理大臣の発言であった。昨年4月米国を訪問していた安倍総理は、米国の上下両院の議会で演説するという栄誉を与えられた。
 その演説の中で、「平和安全法制案」をこの夏までに成立させると明言したのだ。まだ、国会に提出もしていない法案の時期を明示して成立を期すと外国の議会で述べたのである。これに対して、日本の野党は一斉に反発した。これから、戦争法案というレッテル張りの論議が始まっていくのである。
 本稿は、果たして平和安全法制が戦争法といわれるような好戦的な法律なのか検討するものである。先ず筆者の結論と理由を述べ、次いで何故そのような言動になるのか、最後に現状を打開する方策について述べることとする。

1.平和安全法制は戦争法なのか
 筆者の結論は、平和安全法制は戦争を抑止し、戦争を防止するための法律であり、戦争法ではない、ということである。その理由として4点挙げたい。

  @ 国際法上戦争違法化の下、戦争法案を制定することは国際社会から批判・非難を受けるが、国連、各国等から
   非難されていない。
  A 法律の各条文に戦争を行うことの文言は一切ない。
  B 憲法は戦争を放棄し、交戦権を否定している。憲法に反する法律案を作成し、国会に提案することはあり得ない。
  C 安倍総理は、法案の閣議決定後の記者会見の冒頭で「不戦の誓い」を述べている。

●国連憲章第2条第4項
 「われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」から始まる国連憲章は、再び戦争が起こることがないように、戦争違法化を謳いあげた。その根拠が国連憲章第2条第4項である。
 「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」
 また、1970年10月の国連総会決議2625「国際連合憲章に従った諸国間の友好関係と協力に関する国際法の諸原則についての宣言(友好関係宣言)」は、憲章第2条第4項を国連加盟国が遵守すべき第一の原則として宣言している。
 特に冒頭の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際法と国際連合憲章に違反するものであり、国際問題を解決する手段としては決して使用されてはならない。侵略戦争は平和に対する罪を構成するものであり、それに対しては国際法上の責任が生じる。国際連合の目的及び原則に従って、国は侵略戦争の宣言を慎む義務を有する。」は、熟読し、理解しておく必要がある。
 国連加盟国の一員である我が国の為政者が、これらの原則を知らないはずがない。戦争は一人相撲ではできない。必ず相手、敵対国がいる。もし、今回の法制が戦争法というのであれば、必ずや法案の審議段階から国連の安全保障理事会等から非難、批判の動議等が行われるはずである。当然、安全保障理事会も内政不干渉の義務があることを承知しての対応にはなる。しかし、そのような非難等は出ていない。逆に国際社会の平和と安全に積極的に協力していく法案の趣旨、姿勢が評価されている。
 今回、反対の声を上げた方達は、これらの原則を理解しての反対なのだろうか。そして、戦争、戦争と声高に叫ぶことは、我が国が好戦的で侵略国家を目指しているとの負のイメージを国際社会に与えかねないことを理解しているのだろうか。法律戦、世論戦を得意とする国々にとっては、格好の攻撃のネタを与えることになる。
 言葉の力は強い。誤ったイメージを発信しかねない用語の使用は慎むべきである。

●戦争の文言はない
 平和安全法制は、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(10個法律の一部改正法)と、国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(新規立法)から成っている。
 これらの法律の条文の中に戦争という文言はなく、国益のため必要であれば攻撃も辞さないとする表現もない。何をもって戦争法と呼ぶのか理解できない。
 一般に基本法的な性格を有する法律の構成は、第1条に目的又は趣旨を、第2条に定義を、第3条に基本理念又は基本原則を置くこととしている。
 今回の法律においては以下のとおりである。

                           第1条   第2条    第3条
  武力攻撃事態対処法     目的    定義     基本理念
  国際平和協力法        目的   基本原則    定義
  重要影響事態安全確保法  目的    基本原則    定義等
  国際平和支援法(新法)    目的    基本原則    定義等

 法律の大枠を理解するためには、この3箇条を正確に理解することである。第1にこの法律は何を定めており、何を達成することを目的としているのかを掴み、第2にこの目的を達成するための基本的な考え方を理解し、最後に法律内(一部他法律に係る事項も含む)で使用される用語の意義(法規解釈)を精読することである。
 細部は省略するが、今回の主要な法律において戦争を想起するような文言は見出されないのである。以下、主要法律の目的を列挙する。

 ・我が国の平和と独立並びに国民及び国民の安全の確保に資すること(武力攻撃事態対処法)
 ・我が国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与すること(国際平和協力法)
 ・重要影響事態に対処する外国との連携を強化し、我が国の平和及び安全の確保に資すること
 (重要影響事態安全確保法)
 ・国際社会の平和及び安全の確保に資すること(国際平和支援法)

 法律全文とは言わないが、少なくともこの3箇条は読み込んで論議して欲しいと思う。

●憲法に反する法律は制定できない
 立法、行政に携わる人なら、憲法にこの規定があることはご存知のことと思う。
 憲法第98条は「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と定めている。
 法律案を策定するに当たっては、常にこの条文に戻る必要がある。「その条規に反する」とは何なのかを検討しなければならない。
 今回の条規を端的に言えば、憲法第9条、憲法前文の平和主義、憲法第9条の解釈から確立した我が国の防衛政策、国際貢献に係る基本的な考え方であろう。

 憲法第9条は
 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発 動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  二 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

 と定めている。
 本条文を単純に読むと「戦争は放棄されている、交戦権は認められていない」となる。国の行動として戦争が出来るはずがない。
 そして、憲法第98条に照らすと、これに反する(戦争する)法律案は作成出来ない。
 この単純な構図を、法律の約8〜9割の案を作成し、国会の審議を経て法律として成立させ、その法律に基づき行政を執行している政府が理解していないとは思えない。
 今回の一部改正された10法は、法律として制定後、既に10年以上を経過している。
 各法律は、それぞれ制定当時、憲法第9条との関係について論議されて成立し、各法律の規定に基づき自衛隊の部隊等は活動している。これらが憲法違反として最高裁判所に提訴されたことはない。
 今回の法律を、憲法第9条の観点からみるとすれば、国際平和支援法(新法)が第9条に抵触するか否かだけである。活動の目的に照らし抵触していないのである。

●安倍総理の不戦の誓い
 法案が閣議決定した後の記者会見(平成27年5月14日)で、安倍総理は不戦の誓いを表明した。
 「70年前、私たち日本人は一つの誓いを立てました。もう二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく。そして、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この決意の下、本日、日本と世界の平和と安全を確かなものとするための平和安全法制を閣議決定しました。」

 そして、集団的自衛権の限定的行使に関連しては
 「もし日本が危険にさらされたときには、日米同盟は完全に機能する。そのことを世界に発信することによって、抑止力は更に高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくと考えます。
 ですから、戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤りであります。あくまで日本人の命と平和な暮らしを守るため、そのためにあらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行うのが今回の法案です」
 と述べた。

 また、今年の施政方針演説(平成28年1月22日)では次のように述べている。
 「世界のため黙々と汗を流す自衛隊の姿を世界が称賛し、感謝し、そして頼りにしています。その自衛隊が、積極的平和主義の旗の下、これまで以上に国際平和に尽くす。平和安全法制は世界から支持され、高く評価されています。“戦争法案”などという批判は、全く根拠のないレッテル貼りであった。その証であります。」

 一国の政府の代表の発言は、先ずは聞いて真摯に受け止める必要がある。その上で反論すべき点があれば一つずつ論拠を明らかにして正々堂々論議して欲しいものだ。
 もし、戦争法案であったならば、対外関係上、在日の外国大使・公使からの問い合わせ、外国訪問時における外国元首等からの真意の確認等があるはずである。現在までそのような報道は聞いていない。
 産経新聞(平成28年3月21日付)は、平和安全法制に対し首脳会談や外相会談などを通して59箇国が支持を表明していると報道していた。国際社会からは受け入れられているのである。

2.何故このような言動が起きるのか
 このような言動が起きたのは、今回が初めてではない。我が国の安全保障上の重要な案件を検討する際には過去にも起きている。日米安全保障条約改定時の60年安保闘争、我が国が人的な国際貢献活動に着手することになった平成4年のPKO法案時、平成11年日米ガイドラインの改正に伴い制定することとなった周辺事態法案時、そして平成14年から16年にかけての有事関連三法・事態対処関連法制時などである。
 「戦争する国になる」「有事法制は戦争法だ」
 「有事法制は憲法違反だ」「徴兵制の復活」
 「アメリカの戦争に協力するためのものだ」「若者を戦場に送るな」
 等々同じ文言が繰り返されてきた。
 重要案件であり、関心を持つべきであるが、単なる反対のための余りにも短絡的用語の連呼にはいささか辟易する。
 以下、このような言動が起きるその要因2点を述べる。

(1) 法案そのものは精読・熟読して議論されたのか
 国会の委員会審議をテレビで見ていて、いつも疑問、不思議に思うことがある。法案の審議が行われているはずなのに、法案を片手に語っているのを見たことがない。質問者の子机に法案が置かれているのも見たことがない。しかし、今回の法案の厚さは約2.7cm、持ち運ぶには少し重いし、嵩張るし、椅子だけの席には置けないのだろうと一人納得している。
 ところで、果たして法案を精読・熟読して法案審議に臨まれているのだろうか、参加されている議員の先生方に質問したい気持ちで一杯である。
 筆者は昨年まで陸上自衛隊の学校教官として防衛法制について教育してきた。その際、重要なことは、国会の質疑を通じて明らかにされた政府としての有権解釈を学生に正確に伝え、解釈運用を過たないようにすることだった。
 今回の法律の各条文は立法技術的にみても難しい。1条文だけではなく、数箇条と合わせ読まないと理解できないものが多い。したがって、委員会質疑の中で問いただして頂きたいものが少なくなかったが、期待に応えてくれるやりとりがなかったことは残念であった。

(2) 政府の説明は尽くされたのか
 国民に対する政府の説明は尽くされたのだろうか。
 昨年5月14日法案を閣議決定して安倍総理は記者会見を行い、法案の趣旨説明を行った。官邸HPに法案提出の事実、簡単な説明が掲載された。その後、法律が成立するまでの間、政府から国民向けに具体的な説明はなされなかった。
 9月30日、成立した法律が官報で公布された。官報を購読している国民は殆どいないでしょう。また、官報を見ても、法律の改正用語である「改める、加える、削る、削除」で記述された条文をみても理解するのは困難と思われる。
 政府は、全国的な廃案運動の高まりを受け、やっと動き始める。10月20日首相官邸のHPに特別コーナーを設けて普及啓蒙活動を開始した。
 「『なぜ』、『いま』、平和安全法制か」と題する特別コーナーで、日本を取り巻く国際情勢や抑止力の意味などを詳しく解説し、平和安全法の必要性を説明した。
 産経新聞(平成27年11月6日)によると、10月31日までに官邸HPを通じて寄せられた意見は152件。政府によると、安保関連法と憲法との関係について詳しい説明を求める意見や、特別コーナーを評価する意見が多いという。安保関連法の廃止又は撤回を求める意見は全体の7件(5%)に過ぎなかったとのことである。
 また、閲覧数は10月31日までに18527回、開設翌日には約5700回であったが、その後は下降ぎみで同31日時点では1日あたり数百回にとどまっているとのことである。既に法律が成立しており、国民の関心が低くなったのも一因と思われる。
 平和安全法制の廃止法案の提出が予想される中、引き続き国民に対し正しく理解してもらうための施策を検討し推進する必要がある。また、日本国民だけではなく外国人にも理解してもらう方策も検討する必要がある。
 筆者は、陸上自衛隊と米陸軍との共同訓練に参加した経験があるが、米軍人の日本の法制への関心は高い。我が国の国土で共同して対処するためには必須のことなのである。
 彼等に説明する際に困るのは、法律の英語版がないことである。防衛白書の英語版を活用して説明しているが、米軍行動関連措置法、重要影響事態安全確保法等米軍の行動に係る法律は、要約ではなく全文を翻訳しておくことが重要だ。今回の法律では、米軍以外の軍隊への支援等も加わっており、是非準備を推進して欲しいものである。
 現在外務省が進めている領土問題への我が国の対応の外国版のような、国際社会、周辺国家の理解を得るための説明資料の整備も喫緊の課題である。

3.現状を打開する方策はあるのか
●国防意識を持つこと、高めること
 日本は本当に平和なのであろうか?不法に占拠された島嶼があり、毎年領空・領海侵犯が増加しており、日本固有の諸島の占拠を画策されていたり、核実験・弾道ミサイルの脅威に脅かされている。平和とは決して言い切れない。
 北方領土及び竹島問題については聞く耳をもたない、交渉のテーブルに付かない状態が長年にわたって続いている。
 昨年度の領空侵犯は950件を超え、毎日3件いずれかの空域で航空自衛隊が領空侵犯対処に当たっている。今年度は3四半期までの統計によると567回、ロシア機の領空侵犯は減少(32%)しているが、中国機の侵犯が飛躍的に増加(66%)している。
 尖閣諸島については、中国は平成4年に国内法(領海・接続水域法)を制定し、その中で尖閣諸島は自国領土だと明記してしまった。明らかな国際法違反である。現在、海軍艦艇の援護下で漁船及び中国公船により、尖閣諸島周辺の領海及び接続水域への侵犯が継続的に行われている。
 北朝鮮は、安保理決議に対する反発行為として核実験や弾道ミサイル発射を繰り返している。挑発行為、安保理等による制裁(決議)、さらなる挑発行為が続いている。その度に日本は対処行動を余儀なくされている。弾道ミサイルに対処するため、その都度長期間にわたり米軍と共に陸海空自衛隊は全国に展開し行動している。国民は固唾を飲んでその情報に基づいて行動を制限されている。
 今回の法制の前提となっている我が国周辺の国際情勢、我が国に対する脅威を自ら認識することが重要である。国の平和と安全を守っていくのは、一人ひとりの国民であることを再認識することが重要である。
 バートランド・ラッセルは次のように述べている。
   「平和愛好国民たるものは、侵略を欲する国民を打倒する
    意思と能力がなければ、その資格がない。」

●安全保障関連法令を体系的に整理すること
 我が国の安全保障関連の法律は、「建て増し住宅」とよく言われてきた。
 国際法では事情変更の原則により運用解釈が変更される場合があるが、日本の安全保障法制については必要性に迫られて法律の条項を追加してきた。その前提は、憲法第9条を中心として構築された安全保障の基本政策の枠を外れないよう、野党から追及されて廃案に追い込まれないようにすることだった。
 従って、条文は詳し過ぎるほど長くなり、何を言っているのか一読して理解困難な条文があったり、他の条文と併せて読まないと分からない条文もある。
 そろそろ、安全保障関連法令を体系的に再整理する時期に来たのではないか。
 我が国と国際社会の平和と安全に資する法体系は、今回成立した主要な4法律、4本柱で構成される。成立した法律に基づき実施しなければならないことは実施する。

 一方で、憲法第9条、防衛政策の基本、国家安全保障戦略、関係法律の関係を見直し、新たな法体系を検討する必要がある。
 防衛関連法令は行政法である。行政法は、誰かに、何かを実施させる権限を付与するという形式で作成されている。
 現在の防衛関連法令は、余りにも法律の数が多すぎる。行動の種類が多くなったことが、その一因ではある。しかし、「誰かに(主語)」を中心とした法令の規定ぶりを検討することにより、もっと法律の数を減らすことができる。
 また、条文は冗長で解りづらい。自衛官の武器の使用に関する条文は30を超え、命じられた任務行動によって武器使用の要件が異なっている。これらの法律に基づき行動するのは、主として自衛隊の部隊であり自衛官である。その都度、頭を切り換えてやっていかざるを得ない。
 部隊、隊員が疑念なく行動できる、簡潔な条文を目指すべきである。

4.おわりに 〜兵は国の大事〜
 孫子冒頭の始計篇には「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」とある。戦争は国家の重大事である。慎重に検討しないといけない。その際、軍備をするのに五つの事項を検討しないといけないと続いている。「一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法」を検討することを求めている。
 特にここでは天、法を取りあげる。天とは国民と君主を一心同体にさせること、法とは法、制度、組織原則が整って、これが完全に機能していることである。
 平和安全法制について「天」の観点からみると、未だ国民の理解は完全に得られてはいるとは言えない。無関心層というものもあるので、反対の声を上げている方々の理解を得るように、継続的に丁寧に説明していくことが肝要である。
 「法」の観点からは、今法制度が出来ただけである。行動の枠組みは出来たのであり、この法令に基づき行動してみることが肝要である。行動するための要件は整っているにも拘わらず、実行組織に実施命令をタイムリーに下せないことがないようにして欲しいと願っている。法はできたが、使われないならば死文である。
 また、実施機関には、行動するに当たり現実の世界に不適合な規定があれば、積極的に改正意見を提出することを期待したい。一旦法律が制定されたならば、金科玉条に守ることが重要と思われているきらいがある。この考えは棄てて、より良い行動規定の制定を目指して欲しい。
 更に今回の法制には、全てに相手がある。しかも、その殆どは我が国内法の遵守義務がない外国人である。法律戦を得意とする相手に致されないことが重要である。
                                                                                                                                                                        (了)


佐藤庫八(さとう くらはち)
1976(昭和51)年、中央大学法学部卒。1969(昭和44)年4月より陸上自衛隊勤務。2015(平成27)年2月、陸上自衛隊幹部学校防衛法制教官を退官し、現在は千葉科学大学危機管理学部教授。



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