「『あいちトリエンナーレ・2019』表現の自由にも限度がある」
―裏付け証拠不明のものに公金交付は不当―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 愛知県で開催予定だった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ・2019」の展示の一部「表現の不自由展・その後」が中止となった。
 不自由展は少女像や昭和天皇の肖像画を燃やす映像作品の展示に対して、芸術祭実行委員会や県などに抗議が殺到したため、開幕から3日で中止した。文化庁は支出すると約束していた7800万円全額を交付しないと決めた。名古屋の河村たかし市長も愛知県知事の大村秀章氏に非公式に「この文化展は開かない方がいい」と進言していた。
 これに対して大村知事は「言論の自由」に反すると強く反発、裁判の場で決着をつけると意気込んでいる。
 言論の自由は最大限、許容されるべきだが、証拠がない物語を作り出して劇にし、それに公金が使われるとなると話は別だ。不自由展の主たるテーマは慰安婦と昭和天皇である。いま慰安婦は権力が起こした犯罪のように言われているが、本当か。戦中の朝鮮の新聞が数多く残っているが、その中に「慰安婦募集」の広告が載せてある。「月収300円、貸し金3000円まで」というのが相場だ。大学出が月10円の時代に、その30倍稼げるとあれば、慰安婦を募集するのに何の不自由もなかったろう。この状況の中で無理に「強制連行」するわけがない。河野洋平氏は慰安婦と名乗る人を集め、話を聞いて「謝罪談話」まで出したが、被害者の話を聞いた官僚は「女性がいつ、どこの部隊についていったのかの質問は一切認められなかった」という。要するに尋問ではなく相手の言い分を一方的に聞いたというに過ぎない。強制的に連れていかれたという証拠は何もないのである。
 にも拘らず日本人全体が「慰安婦問題」があったと想像するに至ったのは、朝日新聞が吉田清治氏という詐話師のインチキ本を本紙で16回も取り上げ続けたからである。こういう土壌の中で植村隆(元)記者の「慰安婦が名乗り出た」記事が載った。しかし文中に当の女性が「14歳の時母親にキーセンに売られた」と証言しているのである。これらを含めた慰安婦インチキ話を朝日新聞は2014年、全部をまとめて取り消し、謝罪したのである。
 ウソをついていた32年間に世論は醸成された。韓国で行われている慰安婦騒ぎの根拠は朝日新聞のウソ話が根拠だと言っていい。
 2000年12月に朝日新聞の女性記者が主催した「女性国際戦犯法廷」も昭和天皇に有罪判決を宣告した。筋書きは全く同じである。その際NHKが「放送する」と約束して収録したから死刑の場面まで流せといって抗議した。公共放送が慰安婦問題で天皇に死刑を言い渡す番組を放送したらどうなったか。慰安婦裁判だけを流して、死刑判決の場面は流れなかった。その際、安倍晋三氏と中川昭一氏(故人)がNHKにやめさせたと言われたが、証拠もない話に公金やNHKが関わってはならないのは当然ではないか。
(令和元年10月2日付静岡新聞『論壇』より転載)