消費税の主張を急旋回させた共産党

.

政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 共産党は今年7月の参院選公約では、「消費税の10%への増税中止」を掲げていた。
 これについて私は、今年7月に上梓した『日本共産党の最新レトリック』(産経新聞出版)の中で、その一貫性の無さを批判した。というのは、共産党は元々消費税そのものに反対していたはずだからだ。消費税が導入された翌年には、共産党主導で「消費税をなくす会」まで結成している。
 その政党が「10%への増税反対」ということは、8%までは認めるということになる。だから私は、前掲書で共産党が一貫性を持っているなら掲げるべき公約は、「消費税廃止」か、今なら最低限でも「5%に戻せ」でなければおかしいと指摘した。これは同党を揶揄したものである。負け犬根性が染みついているこの党は、消費税廃止も、増税反対も、本気ではないのだ。“受けそうだな”と思うことをその場、その場で言っているだけなのだ。
 だから簡単に態度を豹変させることも多い。私の指摘を参考にしたわけではないだろうが、消費税問題で私の指摘した通りの方向に急旋回を始めた。10月1日付の「しんぶん赤旗」に「消費税減税・廃止を求める、新たなたたかいをよびかけます」という一文が掲載されたのだが、まさに私の指摘そのままなのである。
 消費税がいかに悪税であるかを縷々述べた後、「消費税廃止の実現をめざす決意を表明」「消費税を5%に減税する」とあるのだ。そんなに悪税なら、なぜ参院選で「増税中止」という8%までなら容認するようなスローガンを掲げたのか。その釈明は一切ない。
 なぜこれほど急旋回したのか。理由は簡単だ。山本太郎代表が率いるれいわ新選組が「消費税廃止」を明確に掲げて、予想以上に躍進を遂げたからだ。9月12日、共産党の志位和夫委員長とれいわ新選組の山本代表との党首会談が行なわれた。そこでの合意には、「消費税廃止を目標とする」ということが入っている。共産党が消費税についての主張を急旋回させたのは、この山本代表との党首会談がきっかけになったのだろう。
 共産党は、野党共闘を最優先にしている。これが上手く行かなければ、共産党は埋没するからだ。だが「消費税廃止」は野党共闘を困難にする目標でもある。なぜなら消費税の10%への増税法案を成立させたのは、民主党の野田佳彦政権である。立憲民主党も、国民民主党も、元は増税法案を成立させた民主党議員が大半を占めている。容易に消費税廃止にも、税率引き下げにも同調することはあり得ない。
 参院選前は、「増税中止」で取り敢えずは、野党がまとまった。だが増税が実施されてしまった現在では、「増税中止」のスローガンはもはや用済みになっており、これで共闘することは出来なくなってしまった。消費税問題での野党共闘は、混沌とした状態に陥ってしまったということなのである。それだけに共産党は、れいわ新選組にすり寄るだろうが、成功することはないだろう。