最近、米朝間の緊張状態がエスカレートしている。北朝鮮は今年の年末を期限限定に設定して米国から譲歩を引き出す狙いである。しかし、トランプ大統領は北朝鮮の非核化なしでの譲歩は有り得ないと強硬方針を崩していない。北朝鮮の非核化拒否はもはや統制不能の状態ではないかと考える。
米朝両国がアピールする年末時限が2週間後に迫っている中、韓半島での軍事緊張は過去3年の間、最悪の状態に向かっている。戦争勃発のプロセスは「葛藤 → 緊張 → 紛争 → 戦争 → 講和」の段階だとすると、今のところは「緊張」の最中だと考えられる。
もちろん、米朝間は戦争ではなく、超強大国であるアメリカが圧倒的な先端軍事力を駆使して、「ならず者国家」「テロ支援国家」を一方的に叩くものと言われている。ここで、大きな関心事は、北朝鮮の後ろ盾役の中国がどう出るかだ。
結論から言うと「アメリカが中国を封じ込め、倒すために粘り強く戦いを仕掛けても、中国はアメリカとの戦争を避けて、戦禍・戦災に巻き込まれないように粘り強く頑張るだろう」と考えられる。中国は大東亜戦争の時、日本がアメリカの戦い唆しに巻き込まれ,日本が徹底的に崩れた教訓を分かるだろう。
2017年、習近平国家主席が訪米した際、晩餐会途中にトランプ大統領がシリア空爆を命じて習首席が面子を潰されたことが記憶に新しい。
さらに、翌2018年、アメリカ、イギリス、フランスの戦闘機がシリア空爆をした際、現地に駐屯するロシア軍と中国軍は最新型対空ミサイルS-400で反撃出来なかった。その理由は、アメリカとの戦争に巻き込まれたらロシアと中国の経済が崩れ潰される危険性があるからだ。
中国は経済成長が止まるなか、国内経済が崩れないよう精一杯頑張る姿がうかがえる。不動産バブルや巨額借金だらけの財務構造にもかかわらず、無理やり海外投資や一帯一路に巨額の外貨を無駄遣いした愚策が中国経済の足を引っ張っている。それが中国経済成長の沈滞原因となり、経済が崩れる火種に繋がるとも指摘されている。
さて、文在寅政権の統一外交安保特別補佐官である文正仁氏は先日、「在韓米軍が撤収したら中国が韓国に核の傘を提供したらどうか」と無知なデタラメ妄言を述べた。
これに対して、アメリカのリックスコット上院議員は「ばかばかしい(laughable)」と切り捨てた。
文政権の反米主義者スタッフの共通点は息子や娘をアメリカやイギリスに留学させていることだ。盧武鉉大統領は支持率が下がると、日本が独島(日本名・竹島)に攻めて来ると反日感情を煽った。李明博大統領も兄が賄賂を受け支持率が下がると、いきなり独島に上陸して反日感情を煽った経緯がある。文在寅大統領の親中、従北、離米、反日感情も全く同じ脈絡である。遠い強大国と同盟し、隣の強大国を牽制する「遠交近攻」と「勢力均衡」は、古来からの平和・安保の鉄則だ。4世紀の高句麗は満州大陸を支配した強大国だった。中国大陸を平静した隋と唐は高句麗の首都、平壌城を2回侵攻したが、2回全て全滅したことがある。唐は新羅と同盟して百済を滅亡させたが、唐は新羅に大敗して半島から追い出された歴史がある。明に従った思大思想は朝鮮時代だけだったことが分かる。
蒙古が支配した元は日本に2回侵攻したが、博多に上陸したものの全滅した。アヘン戦争後、中国大陸は列強の餌食となった。満州族が支配した清は日清戦争で大負けし、遼東半島と台湾を日本に割譲した。1950年、朝鮮戦争で中共軍の人海戦術は、米韓連合軍によって大量戦死し、大量の敗残兵は大量捕虜を残した。
さらに、1979年、中、越戦争で中共軍はベトナム軍に大敗。大量の戦死者と敗残兵を残して撤退した経緯がある。中国大陸は歴史的に常に隣国に負け続け、支配された歴史である。世界最長の万里の長城がそれを物語っている。
歴史の教訓と地政学の基本常識は小学生も知っている。ところが一国の大統領の安保特別補佐官が常識外れの妄言を述べて顰蹙を買っている。
文在寅政権の親中、従北、離米、反日外交路線は、結局のところ文政権の政治生命を短縮せざるを得ない結果を招きかねない。
高永喆:拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任