みっともない年寄りが多い

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 先月28日、72回目の誕生日を迎えた。「歳をとったなあ」という以外、なんの感慨もない。今最大の関心事は、なんと言っても新型コロナウイルスである。これに感染しないように細心の注意を払っている。とは言っても入念な手洗いだけである。私はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)という呼吸器疾患を抱えている。新型コロナに感染すれば重症化すると言われている基礎疾患の一つである。

 また私は、鼻中隔弯曲症という鼻の病気で二十歳過ぎに入院・手術をしたこともある。鼻の中の軟骨が曲がっていて鼻詰まりがひどくなる病気である。

 こういう事情もあって、マスクが大嫌いである。すぐに息苦しくなるのだ。ただマスクをしないで咳をすると嫌がられると思って、スーパーの入り口でアリバイ作りのようにつけている。外に出ればすぐにはずす。

 今月2日、政府の専門家会議が「若者が気づかずに感染を拡大させている」として、ライブハウスやカラオケボックスなど、人が集まる風通しの悪い場所を避けるように求めた。若者からは不満の声も上がっているようだが、自らの身を守るためには仕方のないことだろう。

 こういう非常時を迎えるとその人間の本性というものがあからさまになる。特に目立つのがみっともない大人、なかでも高齢者の姿である。

 2月18日午後8時頃の福岡市営地下鉄内で、同じ車両の席でマスクをせずに咳をしている人がいるというので、非常通報ボタンを押し、電車を止めた男がいた。テレビでも放映されたが、優先席に座っているので高齢者だろう。車内はガラガラだった。それほど嫌なら席を変えるかいったん下車すればよい。“迷惑爺”としか言いようがない。しかも、この男は偉そうに足を組んで座っているのだ。マナーも知らない。車内では、「頭おかしいよ」という声が上がっていたそうだ。

 28日には、山手線でもマスクした女性が咳をしたところ、女性に対して「コロナウイルスの可能性があるから、隣の車両に移れ」と怒鳴る男がいて、それを注意した男性と怒鳴り合いになる場面がテレビで放映されていた。傑作だったのは、この場面を撮影した高校生の「大人気ない」とたしなめるコメントだ。この男も恥ずかしい姿をさらしてしまった。

 トイレットペーパーをめぐっても恥ずかしい行動が相次いだ。あるスーパーでは、デマ情報に踊らされた相当高齢だと思われる男性が12ロール入りのトイレットペーパーを4つもカートに乗せていた。この恥ずかしい映像は全国に放映された。今の時代、どこで誰に撮られているか分かったものではない。

 専門家会議は若者に呼びかけたが、私は高齢者に呼びかけたい。裏千家前家元千玄室(せんげんしつ)さんの受け売りだが、仏教の布施の一つに「和顔施(わがんせ)」というのがあるそうだ。ほほ笑むということ自体が人の心を和ませる施しになるということだそうだ。人に嫌われる爺婆ではなく、笑顔で好かれる爺婆になろうよ。

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