検査、検査、隔離、隔離だ!

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 まさか生きているうちに、こんな災厄に見舞われるとは想像もしなかった。新型コロナウイルスである。
 不思議でならないのが、日本の検査数の極端な少なさだ。これまで少なくない人が、“検査数を増やせば感染者が増え、医療崩壊が起こる”と主張してきた。感染症法に基づき、「感染者は原則入院」とされてきたからだ。
 政府は、ようやく今月6日になって1日2万件の検査をすることを決めた。そもそも“検査数を増やせば医療崩壊が起こる”という理屈がおかしい。感染者がいるのであれば、早期に発見し、必要な治療とか、隔離をすべきなのである。これこそが感染拡大を食い止めるために不可欠なことだったのだ。感染者のうち8割程度が軽症というのだから、なおさらそうである。
 韓国では、一日2万件の検査が可能だと言われている。5日付産経新聞によると、韓国では4月4日現在で45万人以上が検査を受けている。感染者は1万人を超えたが、6千人以上がすでに完治している。同国では、公的や民間の研修施設を改装して、「生活治療センター」を設置し、ここで軽症者や症状がない人を受け入れて、隔離したのである。医療崩壊は起こっていない。
 政府が1日2万件の検査を決めたのは、在日アメリカ大使館が日本の検査数の少なさに不信感を表明したからだろう。日本の検査数の少なさは、世界の常識とかけ離れていたのだ。軽症者や無症状者の自宅療養というのも全く解せない方針だ。感染症法によって、「感染した人は必ず入院」と言っていたのが、病院のベッドが不足するので「今度は自宅療養」とはどういうことか。プロの医療関係者ですら感染しているにも拘らず、自宅に戻せば感染拡大を助長するようなものではないか。
 ノーベル賞学者である京都大学の山中伸弥教授が、感染症やウイルスの専門家ではないと断りながら新型コロナウイルスについて、情報発信をされている。
 この情報発信の中に、長年に亘りコロナウイルスの研究をしてこられた田口文広先生からの提言が紹介されている。その一部を紹介したい。
 「COVID-19での犠牲者は殆どの場合、高齢者や基礎疾患を持つ人である」
 「現時点で早急になすべきことは、感染者の特定、隔離である。無症状者や軽症患者は他国で実施されているように、医師の監督下で特定の宿泊施設に収容し、重症患者は指定病院での治療である。国や東京都が打ち出している『外出自粛』では、強制力がなく、感染拡大の阻止は殆ど不可能と思う。私が強調したいのは、COVID-19の感染拡大を抑えるには、感染者の特定、隔離が最も有効で、現段階では唯一の手段である、ということである。都市のロックダウンはかなり長期間(少なくとも潜伏期間以上)行わないと感染防止効果はない」
 感染経路が不明な感染者が増え続けているということは、その背後にもっと多くの感染者がいるということを予測すべきである。甘い対応は命取りになる。