「根拠なき『従軍慰安婦』問題」
―大村知事の不勉強露呈―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 愛知県の大村秀章知事が会長を務める芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」実行委員会は5月21日、名古屋委の河村たかし市長に負担金「3,300万円を払え」と名古屋地裁に提訴した。トリエンナーレ2019の争点は元慰安婦を象徴した「平和の少女像」を展示し、慰安婦の悲劇の責任は天皇にあるとして肖像画を燃やす動画を展示した。この内容に協賛の名古屋市の河村市長は激怒し、止めるよう指示。それでも展示が強行されたのはけしからんと1億7,102万円のうち未払いだった3,300万円の支払いを拒否した。
 今回、大村知事は表現の自由を保障する憲法21条を強調し、「公的な場面こそ表現の自由は保障されなければならない」という。これに対し河村は「元首である天皇の肖像を燃やす」という行為に税金を使用することはできない。どうしてもやりたいなら、自前でやるべきだという。
 知事と市長に訴えたいのだが、慰安婦の史実は存在しなかったのである。韓国では「女子挺身隊従軍慰安婦強制連行」と表現して日本軍が婦女子を強制連行したという。しかし女子挺身隊というのは私の姉も参加したが、女学生3年生以上の勤労奉仕であり、軍とは何の関係もない。従軍慰安婦は業者が女子を集め基地の付近で慰安業をしていたもので、軍が「従軍」の名で連れて行った事実はない。軍の書類の中に「軍の名前を語って婦女子を集める業者がいる」と北支、中支派遣軍参謀長あて通達が出てきた。朝日新聞は「軍の関与の証拠だと大々的に報じたが、こういう注意呼びかけを関与とは言わないだろう。
 戦後も続いたが慰安婦の商売は公認の職業だった。問題が起こるとすれば、カネを払わなかったとか虐待があったということだ。ビルマの日本基地が落ちた後、米軍が慰安婦を尋問して収入の多さにびっくりしたという話がある。この尋問書は米国内の裁判で用いられ訴えた側が敗訴した。戦後40年間近く慰安婦問題は存在しなかった。それが80年代になって騒がれ始めたのは吉田清治という大ウソツキが「私の戦争犯罪、朝鮮人強制連行」(1983年刊、三一書房)という自伝を書いたからだ。のちに本人も子息も内容がウソだと認めているが、韓国では騒ぎの元になった。出版当時、朝日新聞が宣伝し〝吉田本〟の内容が広まった1996年、国連の人権委員会にクマラスワミ氏が「女性への暴力に関する特別報告書」を出した。内容には吉田本のネタが詰め込まれている。
 朝日新聞が1991年慰安婦問題の決定版として金学順氏を見つけ「身の毛がよだつ」と語らせたが、このスクープが実は全くのウソだった。実際は養父にキーセンの検番に売られたのが判明。朝日新聞は2014年、初報から16回にわたって掲載した吉田証言を取り消した。朝日新聞は実に32年にわたってウソを煽ってきた。大村知事よ、架空の史実を税金を使って上演するのは許されない。
(令和2年5月27日付静岡新聞『論壇』より転載)