「米中対立の行方と見通し」
― トランプ政権は軍事行動に出るのか?―2

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政策提言委員・拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官 高 永喆

 アメリカの民主党は普段から親中スタンスを取って来たが、今は共和党の対中圧力を前向きに支持している。国内世論の67%がトランプ政権の対中強硬路線を賛成している。コロナウィルス事態がアメリカだけではなく世界中に与えたダメージがあまりにも大きいと言う証である。
 英国のシンクタンクHJS(ヘンリー・ジャクソン協会)も中国は4兆ドルを英国に損害賠償すべきと指摘しており、フランス、ドイツも損害賠償を求めている。
 コロナショックは1929年の世界恐慌と2011年のリーマン金融危機を遥かに上回る。
 国際社会では不況による倒産が相次ぐ中、貧困層が溢れつつある。特に、中国など開発途上国はこれから不況を抜け出す道が不透明である。中国は米国に次ぐ“G2国家”だと威張ってきたが、殆どが信頼と信用を欠いた途上国に過ぎない側面が垣間見えてくる。言わば、ハッタリや見せ掛けの側面が多い国柄なのだ。
 アメリカは食料と石油資源を自給自足出来るが、中国は食料と資源をほとんど輸入に依存しており、経済崩壊を迎えざるを得ない状況が続いている。特に、中国に現地生産拠点を置いた米アップル社を始め、日本、韓国など西側諸国が中国から生産工場をインド、ベトナムなどへ移転を始めたり、検討している。
 さらに、中国共産党傘下の国営企業ファーウェイへアメリカ、韓国、台湾が半導体核心部品供給を停止する段取りである。アメリカは電子産業のメーカーであり、半導体核心部品とソフトに30%以上のシェアを持つ。これがストップすれば、中国の電子産業は致命的な打撃を受けるはずである。中国において最も致命的な打撃は米国が基軸通貨ドルの威力を駆使して金融、通貨、為替レートで対中圧力を強化する事である。中国も失われた20年を迎えざるを得ない。日本は技術力と債券、海外資産など経済余力と経済基盤が強いと言われる。しかし、中国の場合は米国から金融、通貨圧力を受けたたら致命的な打撃を受けるはずだと指摘されている。
 
 米国をはじめ、国際社会の厳しい圧力に直面している中国が前向きで譲歩しない限り、国が存亡の危機に陥る危険性を抱えている。レーガン大統領が軍備競争を通して旧ソ連を崩壊させたように、トランプ大統領は中国の分離独立、解体を目指しているのが伺える。あくまで最悪のシナリオだが、アメリカが対中軍事行動に踏み切る可能性も否定できない。とは言え、一般的に考えられる軍事行動より、いわゆる限定空爆、あるいは局地戦で致命的な対中打撃を与える蓋然性を否定出来ない。対中軍事行動の対象は北朝鮮と推定されている。しかしながら台湾が実効支配している東沙群島(Pratas Islands)や尖閣諸島も中国が攻めて来る場合、米国は軍事行動に出る可能性が高いと考えられる。寧ろ、アメリカは中国であれ、北朝鮮であれ、挑発したら待ったなしのチャンスと受け止めるかもしれない。過去、冷戦時代、戦時特需は景気浮揚をもたらした経緯がある。特に、アメリカは外国から攻撃されたら必ず報復する前例が多い。万が一、中国がアメリカと武力挑発に踏み切る場合、中国は経済が崩壊するだけではなく、国自体が四分五裂せざるを得ない危険性を抱えている。