「日本学術会議の偏向した学術研究」
―解散し、国益に沿う研究で成果を出すべき―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 日本学術会議の会員候補から6人が任命されなかった問題発覚から約20日。大手新聞各紙や月刊誌を含めて100本以上の記事が出た。このきっかけは「しんぶん赤旗」が報じたものだが、各紙誌が示し合わせたように共産党との関係について書いていない。
 共産党の直属の運動にしても、団体責任者を「共産党」とすると、昨今、旧態依然と見なされてさっぱり活気がわかない。任命されなかった6人全員が「安全保障関連法に反対する学者の会」の賛同者で、そのうち2人が安保法制に反対する「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人、3人が「民主主義科学者協会」(共産党系)の元理事である。
 共産党自身が、各組織の立ち上げや運営に深くかかわっていることは間違いなかろう。政府はそれが分かっているから、共産党まがいの団体に関わっている学者は、学術会員には任命しないとの“内規”を作っているのではないか。その内規に従うのなら官僚の段階で調査しなければ省けない。安倍時代と今回の選抜様式は同様のようだ。それならわざわざ総理が名簿のチェックをするわけがない。かといって「下の段階で選抜した」と公言するのは学術会議を不当に貶めることになるので公式には言えない。首相が「見ていない」というのは本当のところだろう。
 今回は公然と新安保法に反対した人達を省いたが「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ法案に「共謀罪は必要ないと強調した」松宮孝明立命館大教授(刑事法学)も除かれた。日米同盟を円滑に執行するに当たって、共謀罪がなければ米軍は同盟国・日本を信用してくれないだろう。これは軍事常識だ。
 中国の軍国主義は巨大化している。日米でイージス・アショアに勝る武器を研究しようということになっている。こういう緊迫した国際情勢の中で、「軍事研究には協力しない」というのは寝惚けた言い分ではないか。
 中国は民需で使われていたものを軍需に転用し、自在に兵器の研究をやっている。「軍事に協力するな」という言い分こそ、学問の自由を制約することに他ならない。
 かつて学術会議は会員の選挙を通じて完全に日本共産党に乗っ取られていた。学会の推薦方式に切り替えて活性化を図ったが、またもや共産党の乗っ取りに合っているかのようである。政府にとって、この団体は最早、政府の役に立たず、国民のためにもならない団体だ。国家意識の欠けた学者に、年金など給付する必要はない。河野太郎行革相の判断で、国益に沿わないと判断したら、きっぱりと解散した方が学術研究は活発化するだろう。
 社共共闘の時代から野党が政府に反対する理由は、北朝鮮の為にならない、中国やソ連が怒るといった立論ばかりだった。要するに愛国心の欠如、反日論調だけで政治活動をやっているように聞こえる。日本学術会議をよく点検してもらいたい。「学者の国会」と名乗って成果ゼロだ。
(令和2年10月21日付静岡新聞『論壇』より転載)