10月30日付産経新聞が衆参の代表質問を取り上げ、「『国の守り』なぜ語らない」という主張を掲載している。この主張によれば、代表質問で与野党ともに、国の守りについて取り上げなかった。中国公船が尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返している問題を取り上げたのは、立憲民主党の福山哲郎氏だけだったそうだ。その福山氏も「どのような外交努力をするのか」と問うただけだったという。
そもそも菅義偉首相の所信表明演説も、「国の守り」について殆んど語っていない。中国による尖閣諸島への領海侵犯については、触れてもいない。それだけに産経の主張には同意できる。
最近中国批判を強めている日本共産党はどうか、調べてみた。志位和夫委員長、小池晃書記局長が取り上げたのは、学術会議問題、コロナ対策などで、安全保障問題などは一切無かった。
日本共産党は、今年1月の党大会で綱領を改定し、それまでの綱領で中国などを「社会主義をめざす新しい探究が開始」されている国と評価していたものを全面的に削除した。この結果、同党にとって地球上のどこにも「社会主義をめざす新しい探究が開始」している国はないことになった。
こういう評価を下した大きな理由の一つが、中国公船による尖閣諸島の領海侵入、接続水域入域が激増・常態化していることだった。志位氏は、「他国が実効支配している地域に対して、力によって現状変更を迫ることは、国連憲章および友好関係原則宣言などが定めた紛争の平和的解決の諸原則に反するものであり、強く抗議し、是正を求める」(2019年11月4日、綱領一部改定案についての提案報告)と批判していた。
この報告には、次のような記述もある。
「南シナ海について、中国は、二〇一四年以降、大規模な人工島建設、爆撃機も離着陸できる滑走路、レーダー施設や長距離地対空ミサイルの格納庫、兵舎などの建設を進めてきました。中国政府は、当初は、『軍事化を進める意図はない』とのべていましたが、今では『防衛施設を配備するのは極めて正常であり、中国の主権の範囲内』と、公然と軍事拠点化を正当化し、軍事的支配を強化しています。二〇一六年、仲裁裁判所の裁定が、南シナ海水域における中国の権利主張を退け、力による現状変更を国際法違反と断じたにもかかわらず、これを一切無視」(同前)。
かつての民主党政権は、我が国の領海で違法操業を行い、海上保安庁の巡視船に激突して逃走を図った中国漁船の船長を逮捕したにもかかわらず、この船長を釈放してしまい国民の怒りを買った。当時の菅直人首相の判断だった。このように中国や韓国に一方的に譲歩する姿勢が顕著で、これも国民の信頼を失う大きな要因となった。別に野党を応援するわけではないが、立憲民主党ができないなら、共産党こそがこの中国の大国主義、覇権主義を厳しく批判すべきであった。それでこそ野党の存在意義を高めるものである。