共同通信が今月9日、10日に行った世論調査によると1都3県の緊急事態宣言について、「遅過ぎた」が79.2%に上っている。政府のコロナ対応を「評価しない」も68.3%になっている。ほとんどの人が菅政権のコロナ対応に不満を持っているということだ。
今回の緊急事態宣言でよく分からないのは、午後8時以降の外出自粛を強く要請するとしていることだ。昼間も不要不急の外出自粛を求めているというが、これは明らかに誤ったメッセージになっている。渋谷にいる若者にあるテレビ局がインタビューをしていたが、「午後8時以降は自粛を求められているので、それまで遊ぼうと思っている」という主旨の回答をしていた。そう受け取って当然である。
事実、東京や大阪の繁華街の人出は、昨年の緊急事態宣言時に比べて2倍から4倍になっている。不要不急の外出自粛など全く効いていないのだ。20代、30代の若者の感染者が多くなっているが、若者には外出自粛要請が全く届いていない。これでは感染者が増えるのは当然で、減るわけがない。不要不急の外出自粛を強力に呼びかけるべきである。
中国、韓国を含む11ヵ国・地域との間のビジネス関係者らの往来に関しては、継続する方針を決めた。新型コロナ変異種の市中感染が「1例でもあったら(当該国との往来は)即停止する」としているが、果たして十分なチェックが出来るのか。すでに日本には変異種が入ってきている。現在の感染者数の急増とこの変異種の関係はまだ解明されていないが、関係がある可能性も存在するということを指摘する専門家もいる。ビジネスも含めて完全に入国禁止措置を採るべきである。
そもそも今回の緊急事態宣言は、飲食規制を行った北海道や大阪で感染を押さえ込めたということが前提になっている。この前提がすでに崩壊しているのだ。それは大阪の感染者数の急増を見れば分かる。北海道もさほど劇的に減っているわけではない。
前回の緊急事態宣言は、もっと緊迫感があった。街からは劇的に人が減った。だが今回は飲食店対策が中心である。感染拡大は飲食店だけではない。家庭でも感染が広がっている。日本医師会の釜萢(かまやち)敏(さとし)常任理事も「飲食だけを抑えれば、上手くいくわけではないというのが共通認識。1ヵ月半、2ヵ月ぐらいの期間をみなければいけないのではないか」と語り、「感染地域を跨(また)いだ人の出入りをどれぐらい抑えられるかがポイントになる」と強調している。
釜萢氏は分科会のメンバーである。その分科会の共通認識が緊急事態宣言に反映されていないということだ。何か聞かれれば分科会に丸投げをしてきたにも関わらず、都合の良いところだけをつまみ食いしているのが、今回の緊急事態宣言なのである。分科会の共通認識を取り込めば、飲食中心にはならなかったはずだ。県境を跨ぐ移動制限も強力に推し進める必要もあるのだが、そういうメッセージは全くなされていない。