表題の意味は、天の網は広大で目が粗いようだが、悪人は漏らさずこれを捕らえる。悪事には天罰が下るという老子の教えである。
総務省幹部の接待漬けを見ていると粗くて粗雑なのは、官僚達の頭の中のように思える。内閣広報官だった山田真貴子氏は、後輩官僚に「私は飲み会を断らない女としてやってきた」と自慢そうに話をしている映像が残されていた。これが10年前なら未だしも、コロナ禍の昨年のことなのだから呆れるほかない。結局、辞職することになったが、高額接待の責任を取ったからではない。体調を崩して2週間の入院加療が必要になったからだ。相応の責任を取らせるべきだろう。
他の幹部連中の国会での申し開きも酷いものだった。東北新社が衛星チャンネルの認定を受けていたことを総務省の役人が知らないはずがない。ところが、「東北新社は映画配給会社で利害関係者となる放送事業者とは思わなかった」と弁明したのだ。
秋本芳徳情報流通行政局長は、「東北新社様の事業について話題に上がった記憶はございません」(2月10日衆院予算委)、「衛星放送やスターチャンネル(東北新社の子会社が運営)について、話題になった記憶はございません」(2月12日衆院予算委)などと答弁していた。これで逃げ切れると思っていたのだろう。『週刊文春』を侮ってはいけない。
2月4日号で「菅首相長男 高級官僚を違法接待」という暴露記事を掲載した文春は、その後も追及を続ける。3月4日号で、今度は会食の際の音声を暴露したのだ。そこには、菅首相の長男である正剛氏、東北新社メディアサービス社長の木田由紀夫氏らが出席していた。
正剛氏「今回の衛星の移動も・・・」
木田氏「どれが?」
正剛氏「BS、BS。BSの。スター(チャンネル)がスロット(を)返して」
木田氏「あぁ、新規の話?それ言ったってしょうがないよ。通っちゃってるもん」
正剛氏「うちがスロットを・・・」
木田氏「俺たちが悪いんじゃなくて小林(史明衆院議員、元総務政務官)が悪いんだよ」
秋本局長「いやぁ、でも(小林氏は)どっかで一敗地に塗れないと、全然勘違いのままいっちゃいますよねぇ」
木田氏「そう。でしょ?でしょ?あれ1回ね、(小林氏と)どっかで話そうとは思ってる」
もろにBS放送の話をしているのだ。秋本局長は天を仰いでいたが、後の祭りである。
次期事務次官候補とされていた谷脇康彦総務審議官は、東北新社だけでなくNTTからも接待を受けていた。菅首相は、NTTの接待が明るみに出るまでは、それでも谷脇氏を事務次官に考えていたというほどお気に入りだったようだ。山田前内閣広報官も菅首相のお気に入りだった。
菅首相は人事権を振りかざして、気に入らない官僚は飛ばすというのが常套手段で、本人もそれを隠そうともしていない。その結果、忖度官僚だけが残ってしまったのではないか。そして思い上がってしまったのだ。今回の件は菅首相の責任でもある。