「米中対立の構図とは」
―自由・民主主義vs共産・専制主義―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 米中対立の構図が浮かび上がってきた。米国は自由主義を揚げ、中国は共産主義を揚げて対立。米国側には日、英、仏、独、EU。アジアでは印、豪、も加わる。中国は米側がウイグルの人権問題を重視していることから、反米色の強い中近東諸国を味方に付けようとしている。
 われわれが守ろうとしているものは自由主義、民主主義、言論の自由、基本的人権であって、このイデオロギーに賛同する者は「どの国でも加勢せよ」と言うものだ。これに対して中国共産党が狙うものは建国100年の2049年に国力、軍事力で米国を追い抜くことである。そのためにこそ世界の技術力、学術成果を根こそぎ窃盗する国策に邁進した。
 トランプ大統領は就任と同時に中国を叩き始めた。この結果、世界中が中国にしてやられていることに気付いた。「一帯一路」と名乗る国際的高速道や港湾建設は、実は中国がその国を属国にする手段だ。スリランカのハンバントタ港は工事費がどんどん上がってついに返済不能となったのだが、中国は借金のカタに99年の運営権を握った。この轍を見て、各国は中国との公共事業を次々にストップさせているのが現状だ。現状を知ったバイデン大統領は英国に民主主義国による新“一帯一路”を呼びかけている。
 中国は3兆2,000億ドル程度の外貨準備を持っているとの触れ込みだったが、庶民の海外送金が様々な条件を付けて困難になっているのを見ると「そこまで減ったのか」と驚嘆せざるを得ない。これでは大規模な一帯一路をこれ以上進めるわけにはいかない。インドネシアと結んだ新幹線工事はすでに中止されたままになっている。
 国際経済の全域で米欧は中国を圧迫する一方で、ウイグル、チベットの人権問題も厳しく追及している。これに対して中国とロシアは外相会談で対米結束を鮮明にした。
 中国は台湾の併合、新疆ウイグル地区住民の漢民族化を「核心的利益」と宣言し、譲歩しない姿勢を明らかにしている。
 数ヵ月のうちに香港をひったくった様相を見れば分かるが、習主席が民意にお構いなく、台湾をひったくりに来ることは明白に見えている。その戦火の下で尖閣列島や日本の南西諸島も占領されかねない。台湾を所有すれば太平洋への展開は容易になる。「太平洋をハワイを境に半分ずつ」。次は米本土と言う中国の世界制覇の夢は近くなる。
 トランプ大統領の中国叩きは、さながらボクシングのようで向こうもどこを殴られるか分からなかったろう。バイデン氏は親中派ではないかと懸念されたが、反中度ではトランプ氏と同程度。ラグビーのように仲間を横につないで攻める発想だ。
 米中対立を2つの大国の争いと認識すべきではない。自由主義・民主主義と共産主義・専制主義の対立だと自覚すべきだ。その尺度は「言論の自由」があるかないかで決まる。
 (令和3年3月31日付静岡新聞『論壇』より転載)