「河野・小泉に首相の資格なし」
―脱原発は非現実的―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 「次期総理に誰が相応しいか?」との世論調査を読売新聞が5月、産経新聞が6月に行った。それによると、河野太郎氏と小泉進次郎氏が共に上位に挙がっている。菅義偉首相は、読売4%、産経10.7%と、現職首相としては異例の低さである。
 総裁選をやればこの通りの順番で票が来るとは限らない。私の評価では菅氏は地味ながら外交、内政について最も安心して見ていられる。外交政策はがっちり安倍外交を引き継いでいる。優れた点は原子力政策を進めていこうという姿勢を見せた点だ。
 この菅氏に比べると、河野、小泉両氏とも明らかな反原発派である。菅首相は4月22日行われた気候変動サミットの出席を前に、2030年までに13年度比で二酸化炭素(CO2)を46%削減する目標を表明した。46%削減には小泉進次郎氏が大賛成の旗を振ったが、これはざっくり言うと石油・石炭の火力発電をやめるということである。菅首相はその穴埋めに自然エネルギーと原子力発電を考えているが、河野、小泉両氏は太陽光、風力のみを考えているらしい。世の原発反対派も同様のようだが、基幹電力が太陽光と風力ということはあり得ない。日本も10年ほど前、太陽光発電ブームでソーラーパネルの製造が栄え、民家の屋根はパネルで覆われた。しかし今太陽光熱装置は8割が中国製であるという。そのうえ日本は晴天率が50%。風力発電は狭い国土に台風が襲来する。常時季節風が吹いている西欧、北欧とは全く自然状況が異なる。
 CO2の排出量が世界全体に占める割合は中国が28%で、米国が15%と続き、日本は3.4%に過ぎない。日本の排出量を46%減らしても世界全体では僅か1.7%減になるだけだ。日米は目下、対中政策の変更によって産業のグローバリズムを清算しようとしている。半導体の生産を取り返せるかが政策の成否を握っている。安定的な基幹電力が絶対に必要なのだ。アルミニウムの価格は電気料金そのものだと言われるが、かつて日本のアルミ産業は電力が割高だったため潰れた。
 東京電力第一原子力発電所の事故以来、我が国は実質的に脱原発政策に切り替わった如くである。50基あった原発は現在、9基しか稼働していない。左翼や朝日新聞は原発を無用とみなしているが、さながら日本潰しだ。
 東工大の奈良林直教授は「脱炭素の答えは原発活用だ」と述べている。CO2排出量が低い国のランキング上位を占めるのはノルウェー、スウェーデン、スイス、フランスなど水力発電と原子力発電を主要な電力源とする国だという。日本では原子力委員会が審査中の全ての原発を再稼働することでCO2を20%削減できる。世界では小型原子炉が普及しつつあり、既に運転中が中国1基、インド1基、ロシア3基。将来、米国は6基造るという。日本も輸出国になる資格は十分だ。
(令和3年7月14日付静岡新聞『論壇』より転載)