韓国では8月10日から26日まで韓米合同軍事演習が実施される予定である。今回の演習は野外機動訓練ではなく連合指揮所訓練であり、コンピューターシミュレーション訓練である。攻撃的な性格ではなく平和維持のための防御的な訓練である。
しかし、金与正朝鮮労働党副部長は1日、同演習について「南北関係の将来を曇らせることになる」とした上で、「南朝鮮側が敵対的な戦争演習をするか、または大きな勇断を下すかについて注視する」と威嚇声明を出した。
その背景としては、まず7月末の南北通信連絡線の復元に伴う代価を要求したとみられる。また、文政権が来年3月9日の大統領選挙に向けて支持率を上げるため、南北関係の復元に固執していることを見透かし、韓米同盟関係の離間を煽るとともに韓国の世論分裂を狙った術数であろう。
来年3月の韓国大統領選挙の直前に中国北京で開催される冬季オリンピックは、南北首脳会談を成功させる絶好のタイミングである。
脱北外交官で第1野党「国民の力」の太永浩議員は、「北朝鮮の脅迫に屈した場合、永遠に北朝鮮の核の人質になる」と指摘した。また「西海(黄海)上の韓国公務員襲撃事件と開城の南北共同連絡事務所爆破など、過去の挑発に対する謝罪を要求しなければならない」と強調した。太議員の指摘は当然である。北朝鮮が非核化の意思を示さない限り南北首脳会談は全く意味がない。文字通りの「偽装平和ショー」に過ぎない。これらの策略・トリックを国民は見抜いている。
近年、韓米合同軍事演習は実際の野外機動訓練ではなくコンピューターシミュレーション方式で代替されてきたが、その間、北朝鮮は核とミサイル能力を高度化している。
韓米両国は合同演習の延期や縮小ではなく、実戦を模した野外機動訓練を復活させるのが望ましい。昨年、金与正が対北宣伝ビラ散布に対する「応分の措置」を要求すると、文在寅政権は対北ビラ禁止法を作って国民の表現の自由を侵害した経緯がある。北朝鮮の核を廃棄して半島地域に真の平和体制を築くためには、文在寅政権が金副部長の脅迫まがいの一言に振り回されてはいけない。
(2021年8月5日付「世界日報」コラムより転載)