「ウイグル人弾圧に目を瞑るのか」
―中国にモノ申せない親中政治家―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 自民党は総裁選挙を迎えるに当たって、古い世界観から脱皮すべきだ。日本も新しい世界観を掲げて世界をまとめる側に回るべきだ。古い思想から脱却できない者が多すぎる。
 二階俊博自民党幹事長は古い親中派の権化のような人。今のような共産主義体制に固まっているのに、中国が困った時には日本が救ってあげなければならない、だから中国には常に窓を開けておかねばならない、という。実際問題として中国が困って日本に助けを求めたことがあるのか。国民が皆知っているのは、中国の艦艇や航空機が我が国の領海、領空を無視して侵犯し続けている事実だ。
 民主党の菅直人政権の時には、向こうから体当たりしてきた船長を裁判もせずに、特別機で帰国させた。こういう無責任をも対中配慮というのか。日本の親中派は自民党議員といえども同様の配慮をするに違いない。
 今、我々が自覚せねばならないのは、中国が共産党という支配構造を駆使して中国内の少数民族の同化を図り、さらには周辺国をも飲み込もうとしていることだ。モンゴル、チベットで実験した漢民族への同化政策を目下、ウイグルで実行している。中国宗教局高官のマイムエル氏は17年8月10日の新華社のSNSでこう述べている。「血筋を絶やし、ルーツを絶やし、つながりを絶ち、出自を壊せ。両面人のルーツを根こそぎにし、掘り出し、これらの両面人達と最後まで戦うことを誓え」。
 「両面人」というのは、ウイグル人でありながら中国人としても生きる人達のことを言うのだろう。中国の北西部にある新疆ウイグル自治区は中国で唯一ムスリムが人口の多数を占める地域である。自治区内のウイグル、カザフ、キルギス人はトルコ系で、それぞれの言語を持つ。10年の人口調査ではウイグル人が46%、漢人が41%を占めていた。
 ムスリムに対する抑圧は、新しい現象ではない。近年、百万人の人が3~400に及ぶ施設に拘禁されたという。この中には当然、共産主義を教え込む「政治教育」収容所もある。今、最も嫌がられているのはウイグルの一般家庭に中国人の男2人が送り込まれ、同居して「家庭教育」をしていることだという。このやり方は常軌を逸しているのではないか。
 20年6月、国連が50ヵ国の特別手続きによって「中国政府の新疆とチベットの宗教的および民族的マイノリティに対する人権状況を調査する」声明を出した。21年1月、米国政府は中国のウイグル政策は「ジェノサイド(集団殺害)」に当たると認定した。
 中国のウイグル政策非難に「同調すべきだ」との声が日本でも上がっているが、野党は勿論のこと、自民党でさえ賛同していない。先の国会の会期末、下村博文氏が「決議案」の党内取りまとめに当たった。「難関」と見た二階幹事長にサインを求めた途端、副幹事長の林幹雄氏が出てきて「公明党にも相談しなくちゃ」と引き取って終わり。親中派の中には「証拠がない」と嘯く議員すらいるのだ。
(令和3年9月15日付静岡新聞『論壇』より転載)