立憲民主党に新しい党首が決まった。泉健太氏、47歳である。立憲は前代表の枝野幸男氏が共産党と「閣外協力」を約束して、衆院選の候補者調整をした。この結果が議席を14も減らすことになって、枝野幸男氏の代表辞任に至った。
泉健太氏は中道右派の人物で、泉氏が枝野氏の流れをくむ逢坂誠二氏に決選投票で圧勝した。この流れからみると、立憲は共産党と組まない方がよいという保守的空気が支配しているようだ。泉氏は共産との共闘について「何か形あるものが残った訳ではない」と言外に協定は存在しないと述べたが、志位共産党委員長の方は「公党間の約束だ」と立共共闘を続けていたい構えだ。
共産党と組むという時代錯誤が、なぜこの時代に続いているのか。国際情勢が複雑で危機が迫っていることは国民の誰しもが感じている。だからこそ安倍政権は衆参6回の選挙で連勝したのだろう。憲法問題が国民の身近に下りてきたこの時期に「憲法改正反対」の共産党と「安倍の下では憲法議論はしない」という枝野氏が結びついた。外交感覚がゼロとしか言いようがない。これでは立憲の半分はついていけないだろう。
立憲の課題は、①憲法改正に応じるか ②国政の総合的なビジョンをまとめる――の2つであるはずだ。野党第一党でありながら、長期ビジョンを示したことがない政党が、選挙上の術策のみで天下を狙うとはおこがましい。
泉氏の立憲は“共産抜き”の全野党連合を目指すだろう。目指さなければ共産党と同じじり貧の党勢となり、やがて共産党と共に滅びる。この運命を感じた保守系は、沈没前に党を抜け出して国民民主党と合併する可能性もある。玉木雄一郎国民民主代表は「共産党絡みの相談なら一切受けない」と宣言し、全国区狙いの維新と強く結びつき始めている。次の参院選で1人区は32区ある。ここは政党連合の絶好の試練の場だが、共産党を組み込んだ野党連合は結成できないだろう。それをやるようなら、衆院選の二の舞になることは明らかだ。
日本の政治が改革力に欠けるのは共産党の存在と、それに追随する野党がいたからだ。共産党という名前にこだわるのは、天下を取ったのちに、共産主義によって言論や行動の自由を奪う手段を放したくないからだろう。ヨーロッパの共産党はソ連崩壊前に全党が独裁的手法を捨てた。自由主義に戻ったのである。日本共産党は習近平主席と同様の手で日本を支配することを諦めていないように見える。
欧州各国の共産党は冷戦時からソ連型、中国型支配に反対だった。自由化要求に反対して、56年ハンガリーに攻め込み、68年にはルーマニアを圧迫した。この結果70年代にユーロコミニズムが澎湃として起こり、①暴力革命の放棄 ②プロレタリア独裁の破棄 ③党内民主集中制と分派規制禁止規定廃止――を共通の価値とした。共産党が死守している3つの価値はとっくに終わっているのである。
(令和3年12月3日付静岡新聞『論壇』より転載)