平和維持の鉄則は今も不変

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政策提言委員・拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官 高 永喆

 12月9、10の両日、米国は世界の自由民主主義陣営の指導者を招き、初の「民主主義サミット」を開催する。この国際会議に米国は“専制主義”の中国とロシアなどを招かず、中国への牽制を一層強める方向だ。
 さらに、ファイブ•アイズ(米英など5カ国機密情報共有の枠組み)をはじめ、クワッド(日米豪印4ヵ国協力)やオーカス(米英豪の新安保協力の枠組み)を通して対中包囲網を強化しつつある。米中の覇権争いは軍事面だけでなく、外交•経済面でも拡大しているのだ。
 冷戦時代、旧ソ連は米国との覇権争いに敗れて崩壊し、15カ国(バルト3国を含む)に分離独立した。今度は中国が米国と覇権を争い、「中華民族の偉大な復興」という夢の実現を目指している。その焦点になっているのは台湾と朝鮮半島だ。米軍首脳は台湾侵攻について、近い将来(1〜2年)にはないが、「6年以内」に起きる可能性を指摘している。ただ、中国が台湾侵攻に踏み切れば米英など自由民主陣営との戦争に拡大し、中国経済が崩壊する恐れがある。従って、台湾侵攻の危険過ぎる冒険は最終手段であり、まずは台湾内部の攪乱など他の方法を模索するものと考える。
 一方、台湾は有事に備え、中国本土の三峡ダムを破壊する長距離ミサイルを配備するなど抑止力を整える計画である。言わば、守りを固めて相手の急所を突く針ネズミ戦略であり、強大国に囲まれたイスラエルやスイスなど小国が大国に負けない安保戦略である。
 中国は1979年、統一ベトナムに侵攻したが大敗して撤退。旧ソ連は79年末にアフガニスタンに侵攻したが、苦戦の末、89年2月までに撤退し、その後、国が崩壊した。
 韓国の現政権は米中両国の顔色を見る二股路線を取っている。安保は米国に頼り経済は中国に依存するスタンスだ。だが、中国に進出した日米韓の企業の多くが中国を離れ、東南アジアとインドに生産拠点を移転しつつある。先進国企業の脱中国の動きに中国は焦っている。
 米韓同盟と日米同盟は朝鮮半島の安保を保つ二本柱であり東アジアの平和を維持する礎である。遠い強大国と同盟して隣の強大国を牽制する「遠交近攻」と「勢力均衡」は永遠に変わらない安保・平和維持の鉄則であることを再認識すべきだ。
(2021年12月8日付『世界日報』コラムより転載)