「タドンのような共産党」
―消えつつある存在意義―

.

会長・政治評論家 屋山太郎

 立憲民主党が第3極としての存在を問われている。10月末の衆院選では「立憲共産党」と言われたのが敗北の原因と言われている。共産党と組んだのは、共産党が各選挙区で約1万の票を持つからだと見られたが、逆に「組んだから負けた」という自省の声もある。長野1区で勝ち続けてきた篠原孝氏は小選挙区で負けたが、敗因をこう語っている。「たまたま市長選があって、その候補者を立・共で推薦した。その応援に志位和夫共産党委員長が来て、立民の街宣車に乗った。その姿を見て「イヤ~な気がした」。選挙区で負けたのは、自分を推してきた無党派が自民に流れたからだ、と篠原氏は分析する。実は党内には篠原氏同様の見方をする人が意外に多い。
 立民党は共産党との共闘で行くか、独立して闘うか、党内論争が続くと見られるが、これまでの情勢と異なるのは、共産党の弱体化である。
 志位委員長は立民に抱きついて「閣外からの協力」路線を続けようとしているが、続ければ立民の衰退は必至。大きく変わると見るきっかけは連合の「共産党とは組まない」路線である。これまでも連合は裏で組んでも、表では「組まない」と言ってきた。連合の新会長の芳野友子氏は何度も共闘路線を批判し「これでは組合の票の行き場がなくなる」と明言している。立民も「うやむや路線」が取れない場合、共産との関係をすっきりしなければ、野党第一党の立場が崩れる可能性がある。維新の膨張力の強さを見れば、この党が国民民主党と合体して「全国区」になる可能性は十分にある。
 こういう政界変化の前兆の中で、共産党が生命力を吹き返す力があるだろうか。共産党の基本政策は日米安保条約の破棄、自衛隊の解消である。「中国が27年までに軍事侵攻する」といった予想がある中で、同党の時局認識を受け入れる国民がいるのだろうか。要するに共産党は中国の子分か、国際情勢音痴か、いずれかでしかない。外交に無知なばかりではない。「護憲」と言いつつ、「天皇制は廃止」だという。護憲と天皇制廃止は矛盾している。西側最大を誇ったイタリア共産党は、ソ連による56年のハンガリー制圧、68年のチェコ弾圧を見て、自国防衛に不可欠だとNATO(北大西洋条約機構)を認めた。伊仏西など欧州各国の共産党はユーロコミュニズム(欧州共産主義)を旗印に連合し、対ソ連への出方を相談してきた。ソ連式の軍事制圧を非難して、共に「社会主義を民主主義によって進める」と暴力革命を否定。独裁になりがちな民主集中制をやめ、党首公選にするなど党のあり方を変えた。必然的に「共産党」という名も捨てた。イタリアの共産党が「左翼民主党」と名を変えたのは、ソ連が崩壊する10か月前、91年2月の党大会だった。
 日本共産党は外交はゼロ、まともな内政もない。時代外れのタドン(炭団)のような存在だ。その存在意義は、なくなりつつある。
(令和3年12月22日付静岡新聞『論壇』より転載)