年明けを迎え北朝鮮はわずか2週間足らずの間に4回ミサイルを発射した。
5日と11日のミサイルはマッハ5~10を記録した極超音速ミサイルであり、14日に発射した列車搭載のミサイルと17日発射した短距離弾道ミサイルは射程を勘案すれば両方とも在韓米軍基地を標的としていることが分かる。
米国のバイデン政権はこれまで米朝対話を提案しながら融和路線を維持して来た。
中国も北京冬季五輪を控え平和ムードである。
にも関わらず、北朝鮮は北京オリンピック参加を拒んでいる。
北朝鮮が強硬路線に傾く背景には、まず、3月9日に行われる韓国大統領選挙で反米、反日と親中、親北を主張する政権与党の大統領候補を応援する狙いがあるのだろう。即ち、韓国に戦争を恐怖する雰囲気を造成しながら「戦争か平和か」の選択を迫る狙いである。
2番目は金正恩総書記が父正日氏の後継者となって10周年を迎え、著しい経済の落ち込みに加え韓流ブーム拡散による体制崩壊を防ぐため、国内の緊張を造成する必要からミサイルを連射した可能性が伺える。
3番目は北朝鮮ならではの抑止力誇示であり、北朝鮮軍部の強硬派(タカ派)が主導権を握った可能性が垣間見られる。
言わば一石二鳥、三鳥を狙った挑発である。
さらに、米中覇権争いの中で中国は北朝鮮の挑発を黙認していることから中国が裏で仕向けた可能性も否定出来ない。
北朝鮮は20日、バイデン米大統領の就任1周年記者会見の時間(米国時間19日)に合わせ、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の再開を検討すると明らかにした。2018年4月に決めた核・ICBM実験の猶予宣言撤回もあり得ると表明したのだ。
しかし、もし北朝鮮が核・ICBM発射実験を再開すれば、米国の対北軍事行動まで促す強硬世論を引き出しかねない。危険過ぎる冒険であり、国際社会の対北追加制裁を招くはずだ。
北朝鮮の当面する最優先課題である体制安定と経済立て直しの近道は、南北協力と非核化交渉を通じた制裁緩和だけである。
度重なる軍事挑発の脅威では危機的状況を乗り越えることはできない。結局、自分の手で自分の首を締める結果を招くということを北朝鮮は自覚するべきだ。
(2022年1月24日付「世界日報」コラムより転載)