2月24日に始まったロシア軍のウクライナ侵攻は同国国民の強い抗戦に遭い、戦線は膠着状態にとどまっている。
旧ソ連は1979年12月、アフガニスタンに侵攻し傀儡(かいらい)政権を樹立したが、国内の激しい抵抗と国際的な批判を受けて88年に全面撤退。その後、ソ連自体が崩壊した。
今回、国連と国際社会は名分のないロシア軍の侵攻に強く反対しており、ロシア国内でも戦争反対デモが拡散している。
米欧が主導する対ロシア制裁は貿易、金融、通信、交通など経済面だけではなく、スポーツ、文化など多方面にわたっている。
ロシアの通貨ルーブルは急落しており、世界一の長者と言われるプーチン大統領の個人資産も凍結され、国内の政治基盤も脅かされている。
さらに、米国、英国、ドイツ、フランスなど欧米諸国がウクライナに武器提供と資金援助を行っている。
中立国家のスイス、フィンランド、デンマークも制裁に参加した。元よりロシアはウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟を阻止する狙いだった。しかし、今回の侵攻はウクライナのEU加盟を促し、かえってNATO諸国の結束をもたらす結果を招いた。今回の侵攻の帰趨(きすう)は、「核心利益」の台湾と尖閣諸島を虎視眈々と狙う中国にとっても多くの教訓を与えるはずだ。
ウクライナは1991年のソ連解体により独立した後、世界3位の核保有国として核兵器を放棄しない選択肢もあった。
しかし94年12月、米•英•露が安全保障を提供することを盛り込んだ「ブダペスト覚書」を締結し、96年6月に1,800余基の核弾頭とICBM(大陸間弾道ミサイル)を全てロシアに返還•廃棄した。
28年経った現在、米英露が約束したウクライナの安全保障は全く機能していない。当時、ウクライナが核を放棄せず、核保有国の地位を維持していたら、ロシアは敢えて侵攻できなかったはずだ。
北朝鮮はウクライナの核放棄の前例️を教訓にして、絶対に核を放棄しないだろう。
ロシアのウクライナ侵攻は平和ボケの日本、韓国にも反面教師となっている。
日本と韓国は日米同盟•米韓同盟によって安全保障が支えられているが、自らの抑止力の強化と核による恐怖の均衡を前向きに考えるべき転換期を迎えている。
(2022年3月4日付「世界日報」コラムより転載)