ロシア苦戦の背景に軍部腐敗も

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政策提言委員・拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官 高 永喆

 2月24日、ウクライナに侵攻したロシア軍は3日、あるいは1週間で首都キエフを陥落させるだろうと言われた。しかし、3週間が経っても戦線は膠着状態で、ロシア軍はウクライナ軍の根強い抗戦に遭って連日、苦戦している。ウクライナ軍はホームグランドの利点を活かして、至る所でロシア軍狩りを見事に展開している。
 ロシア軍が苦戦する一番の原因は、最初の情報判断が間違ったことだ。ロシア軍の情報当局はプーチン大統領にロシア軍がウクライナに進入したら皆、歓迎すると嘘の情報を報告した。結局、その報告を受けたプーチン大統領の判断ミスが背景にある。
 また、ウクライナはロシアと同じスラブ族の兄弟国であり主敵ではないと、名分のない戦争に戸惑っていることもロシア軍が苦戦する原因である。
 もちろん、ロシアは世界2位の軍事力を持っているが、国家腐敗指数は世界1位である。当然ながら、軍部の腐敗指数も世界1位であり、ロシア軍がウクライナ軍に連日敗れるのは不思議ではない。ロシア軍に配給された缶詰は2002年に生産され、保管期限が20年も過ぎており、空腹の兵士は商店で食料品を盗むなど、士気が著しく低下している。軍隊は士気を食べる集団である。士気が低下したロシア軍は装備を捨てて脱営・脱走したり、自ら降伏する兵士が増えつつある。ウクライナに向かう道路には64kmも燃料補給が切れたロシア軍戦車が停車して動かず、軍需・補給が機能してない。腐敗したロシア軍部の高官は国防予算を横領、着服することが慢性化しているという。
 3月14日時点でウクライナ軍は約3,000人が戦死したが、ロシア軍は12,000人が戦死。また、ウクライナ軍は狙撃が得意であり、ロシア軍の将官4人が狙撃され死亡した。
 さらに、ウクライナ軍はロシア軍の戦車400台、装甲車2,000台を撃破しており、野砲214門、対空火器34台を捕獲したほか、航空機167機を撃墜している。
 プーチン大統領は旧ソ連軍が1979年から10年間、アフガニスタンで長期戦に巻き込まれて崩壊した教訓を踏まえ、早く停戦を結ぶ決断が求められる。
(2022年3月17日付「世界日報」より転載)