「共産党を権力の外側に」

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会長・政治評論家 屋山太郎

 1994年、選挙制度審議会が中選挙区制度をやめて「小選挙区比例代表並立制」にするよう勧告した。その狙いは「政権交代」を可能にする制度を、というものだった。それが起こらないのは、小選挙区制度に比例代表制を加えた(並立した)からではない。共産党が存在し、常に“野党政権”に加わろうとするからだ。このため野党全体が反共産アレルギーを食らってしまう。前回の総選挙では、これが立憲民主党離れを起こした。
 次の参院選を目指して、共産・立憲は同じ組み合わせの道を歩いているが、共産と組んだら負けるのは、歴史の教訓と言っていい。
 選挙で勝つのは、無党派層がどう転ぶかにかかっている。無党派が最も嫌うのは、自由と民主主義が滅びることだろう。公正な選挙をやっている限り、民主主義は滅びないと、皆が信じているようだが、ヒトラーが生まれた時のドイツはどうか。ヒトラーに全権を任せた結果、ナチス独裁となったのである。戦後のドイツや米国では、共産党は法律で認められなかった。憲法や法律で守られているはずの「民主主義」は選挙によって合法的に破壊され、全体主義や覇権主義に陥る危険性を常に内包している。
 かつて日本は吉田茂宰相時代、共産党が「(国家による)保護に値するかどうか」を占領軍と共に真剣に議論したことがある。結局、吉田首相は共産主義思想の危険性を理解できず、合法とした。日本の共産党は「暴力には暴力で反撃する」という「敵の出方論」をとっており、「暴力革命」を芯から否定してはいないのだ。
 かつて隆盛を誇った日本社会党の中には共産党張りの過激なマルクス主義を掲げたグループがいたが、村山富市氏が政権を獲ったのを機会に飛び出していった。その後を受け継いだ立憲は、幸運にも共産党のイデオロギーを吐き出すチャンスだった。しかし共産党との親戚付き合いを続けたことで、無党派の信頼を得られなかった。今、再び全野党共闘の趣だが、これでは選挙に勝てないだろう。
 アンゲラ・メルケル氏は中道右派を率いて16年間ドイツ首相を務めた。21年12月の選挙で、中道左派・ドイツ社会民主党(社民党)のオーラフ・ショルツ氏に政権が交代した。日本の常識では、政権が保守から革新に替わったほどの変化だが、ショルツ氏はプーチンのウクライナ侵略を見て、大々的な軍事装備の支援と防衛費の倍増を打ち出した。軍拡を渋っていたメルケル氏に代わった社会党が、一夜にして政策の大転換を図ったのだ。ヨーロッパ諸国の政党には共産主義の暴力性がない。政権交代が容易にできる理由だ。先日フジテレビで共産党の小池書記局長が語っていた。曰く「ロシアが核を先に使うと言ったから、核の抑止力はなくなった」――では、どうする?「早く安保理を動かす努力をすべきだ」――その安保理が、根本から壊れているのが問題なのだ。
(令和4年3月30日付静岡新聞『論壇』より転載)