小国に負けた大国の教訓

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政策提言委員・拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官 高 永喆

 2月24日、ウクライナに侵攻したロシア軍は首都キーウを速戦即決で占領すると言われたが、1ヵ月以上苦戦した末に、首都周辺などから後退した。撤収後に民間人の遺体が多数見つかり、国際社会の非難が高まる中で、ロシアの️恥部と弱みが赤裸々にあぶり出されたわけだ。
 1904年からの日露戦争の時、欧米では「日本はアジアの小さな片田舎•島国だから、軍事大国ロシアに勝つはずがない」と言われた。しかし、日本は黄海海戦や旅順攻略で勝利し、バルチック艦隊を迎え撃つ対馬海戦(日本海海戦)でも大勝利を収めた。その後、ロシア帝国は崩壊してソビエト連邦が誕生した。
 歴史を遡ると、12世紀末、東•西洋にわたる世界最大の領土を支配したモンゴル帝国は朝鮮半島に侵攻したが、39年間にわたる高麗軍の粘り強い抗戦に負けて講和条約を結び、両王朝は姻戚関係となった。
 モンゴル帝国は日本にも2回侵攻したが、いずれも敗北した。
 第2次世界大戦直前、ヒトラーがロシアに侵攻したきっかけは、小国フィンランドに侵攻したロシア軍が大負けし、敗退したことだった。
 中東の小国であるイスラエルはイスラム教の諸国に囲まれているが、相次ぐ戦争で負けたことがない。
 ベトナムでも米軍が10年以上駐留して北ベトナムやベトコン(南ベトナム解放民族戦線)と戦ったが、結局、撤収を余儀なくされた。
 その後、1979年、今度は中国が統一ベトナムに侵攻したが、熟練したベトナム軍に大敗して撤退した。
 万が一、中国が台湾に武力侵攻したとしても、台湾が万端の準備を整え、結束して対応すれば、中国も予想外の苦戦を余儀なくされるだろう。
 今回、ロシア軍のウクライナ侵攻は台湾侵攻を目論む中国にとって、侵攻作戦や国際社会への対応の見直しを迫る反面教師の効果が発生したと考える。
 ロシア軍のミサイルや戦車、航空機の部品は一部ウクライナで製造しているという。故に、ロシア軍の装備生産は停止状態に追い込まれている。
 アフガニスタンに侵攻した旧ソ連は10年間の長期戦に巻き込まれ、89年に撤退して、結局、ソ連自体が崩壊した。プーチン大統領は歴史の教訓を踏まえ、早期停戦に持ち込む決断が必要不可欠である。
(2022年4月9日付「世界日報」より転載)