7月8日の夕刻、安倍元総理に初めてお会いした日のことがまるで昨日の出来事のように私の脳裏に甦り続けた。1982年11月末、御父君の安倍晋太郎氏が外務大臣になり、安倍元総理は、その政務秘書官として外務省に初登庁された。報道課で首席事務官を務めていた私は、外務大臣の身近なところでお仕えする省員の一人として、若き日の安倍晋三秘書官(当時28歳)に紹介された。月日のたつのは早いものでもうあれから40年になる。
その後、安倍元総理は衆議院議員になられ、私も外務省でさまざまなポストを経験し、その都度あちこちで接点が生まれた。ご一緒に海外出張することも一再ならずあった。最後の公務は私のベルギー大使時代に総理としてブリュッセルにお迎えしたこと。公式行事が滞りなく済んだ後の非公式な会食の席でさまざまな話題が飛び交う中、総理からは昔の映画やプロレスにまつわる思い出話が次々と披露され、夜が更けるまで談笑させていただいた。趣味の話をされる時の総理の御様子は屈託なく爽やか、28歳の青年当時のお姿にもどったようで嬉しかった。
その安倍元総理も凶弾に倒れ今はこの世におられない。何とも空しく、無念でならない。ご冥福を祈るばかりである。