「言論の自由が守られている日本」

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会長・政治評論家 屋山太郎

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が自民党議員に交じって活動していると聞いた時には驚愕した。30年程前に起こった事だが、統一教会が自民党の名を借りて政治資金を集めていたという噂があった。他にも公共事業に絡んだ資金も混ざっていて、選挙となれば金権選挙そのものだった。自民党の総裁選でも金が飛んだ。秘書まで一流料理店で食事をしていた。
 1994年に選挙制度をそれまでの中選挙区制度から小選挙区比例代表制に改正したのが金権選挙にとっての致命傷になった。選挙運動の単位が小さくなると必要な資金も小さくなるし、大金を撒けば目立ちすぎるようになった。
 以前、宗教法人は政治に資金をいくら使ってもいいのかと思い、フランスの宗教法人に詳しい人に取材に行ったこともある。その専門家はフランスでは「宗教は悪だ」と認識されているという。驚いて何度も念を入れて尋ねたが「巨大なる金を持つ者は、金の力で人を動かすことが出来る」と譲らない。例えば当時、フランスでは創価学会は許可されていなかった。現在、許可されているのは、フランスの当局や社会になにか認識の変化があったのだろう。
 旧統一教会が世界平和統一家庭連合への名称変更を申請した動機は金銭問題だったのではないか。というのも教会の金銭に関わる係争事件は劇的に減っているという。2006年に消費者団体にかかわる紛争・被害件数は1,343件(被害額40億円)だったが、18年に消費者契約法に霊感商法に関する項目を追加したところ、21年には被害件数は47件、被害金額もわずか3億円程度に減っている。先日の自民党の茂木敏充幹事長の会見によると党所属国会議員と世界平和統一家庭連合との関係はこうだ。
 旧統一教会と何らかの接点があったのは衆参両院の計379人の内、179人。一定以上の関係があったという121人の氏名が公表された。選挙支援を依頼し、支援を受けたのは斎藤洋明衆院議員と井上義行参院議員の2人だった。
 名前をチェックしながら他人の選挙人名簿を覗いている罪悪感を味わった。選挙の手伝い自体が好きで集まってくる人が多いが、義理で嫌々手伝っている人もいる。他人に見られたくないと思っている人もいるだろう。お互いに緊密に助け合ってこそ、選挙の手伝いというものである。思想信条は当人とは違うけれども安保、軍備という重要点で合致するから手伝う場合もあるのだろう。全項目で合致するというのなら入党すればいいのである。
 民主主義国には「言論の自由」がある。私も存分に口を利いてきた。ところが30歳の頃イタリアに駐在したところ「何でも口にするな」と叱られたことがある。その意見に反対の輩がいれば「刺し殺される」というのである。日本ほど言論の自由な国はない。
(令和4年9月14日付静岡新聞『論壇』より転載)