日本のエネルギー政策を刷新せよ

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会長・政治評論家 屋山太郎

 米中の諍(あらそ)いが世界中のありとあらゆる業界で起こっている。ファーウェイ(華為技術)という電子機器の売り上げは世界一を誇ったが、この分野でトップを取れなければ、二流国に落ちたことになる。前米大統領のトランプ氏はファーウェイにはスパイを働く、秘密の仕掛けがあると最後は輸入禁止にしてしまった。ファーウェイの販売率は2割にも落ちて、台・日・米に半導体製造業が起こっている。
 先日の節電騒ぎで気付いたのだが、電力の面で世界的な競争が起こるとすれば、普通の人なら電力補給なら「原子力がいい」と着想するのではないか。このご時世に新たに起こす電力源は原子力ぐらいしかない。
 22年の日本の電力を見ると、原子力4.32%、石炭28.60%、天然ガス36.31%、太陽光9.50%(各社データを調査しJFSSが纏めたもの)となっている。この中から天然ガスをロシアから止められたのに代わって、増やす分は原子力ぐらいしかない。原子力は小型化とか地中化とか、水を要しないとか、新発明の可能性を含めて、余裕がある。原子力の学問をかけて、廃棄物の処理方法に未来を拓けば、電力問題は一挙に解決するかも知れない。
 改めて各国の電力を見ると、ドイツ5.87%、石炭、天然ガス17.04%、フランスは原子力64.01%、石炭2.36%と各国の比率はバラバラである。これは原料をどこから得るかで変わってくる。電力源のうち天然ガスを一人で握っているロシアが供給国の日本とドイツを閉め出そうとしている。
 これに対して岸田首相は17基の原発を再稼働すると言う。国内にあった17基の原発の段階的廃止を進めていたドイツのショルツ首相も供給停止を受けて、最後に残った3基のうち2基を再稼働すると述べている。
 日本には原子力規制委員会があるが、これが真面目な研究機関なのか分からないシロモノ。研究を始めて10年かかるのはざらだが、こんなノロマでは研究とは言えない。日本学術審議会のような左派系学者はひたすら検討をサボるのだと言う。従って一件、検討を依頼すると答えに10年もかかる。政府は原子力に関わる委員会のメンバーを一新して出直すべきだ。
 日本学術会議が始まった頃、原子学会(第5部)は共産党員に囲まれた。その構造を改革するために、根本的に改組したつもりだが、会員になる学者が共産党系が多いのではどうにもならない。今回、日本学術会議が「デュアルユース」(軍民両用)を宣言したが、自民党内では学術会議廃止論が強い。こういう構造的欠陥を抱えた組織は廃止した方がよい。