ロシアがウクライナをさらに攻撃する、あるいはその逆のケースであっても、世界大戦規模の武力抗争の勃発は避けられないだろう。
戦後、日本の歴代左翼政党は憲法を盾に非武装を唱えてきた。日本が丸腰で存在していれば、周囲の国々は日本を攻撃しないはずだと主張してきたのである。私が中学生の頃、憲法前文を丸暗記させられたが、当時から「お祈り」に近い文章だと感じていた。そのお祈り状態の中で日本の周辺国は、着々と軍備を積み上げていった。積み上げてきたのは日本ではない。日本はこれまで軍事費をGDPの1%以下と決めていた。しかしこの程度では敵にやられるとの判断から、最近になってその1%を2%に引き上げた。27年度までにざっと43兆円近く増やそうというのは並大抵の変化ではない。これまでの国会の常識がぶっ壊れるほどの大転換である。以前から自民党の中には軍備増強を主張する勢力がいたが、その人達にとっても予想外の大盤振る舞いだっただろう。
とはいえ改めて地球儀を眺めてみると、日本は本来あるべき水準に軍事費を引き上げざるを得なかっただけだと実感する。隣に「台湾を獲る」と宣言する中国が存在する。中国に手を出されれば、米軍の台湾防衛にともに立ち上がらざるを得ない。その防衛参加の義務を放棄すれば、日本は無傷で済むのか。日本にとって国際的重圧と言われるものから逃げるべきではない。重圧から逃げるということは、今回プーチン氏がウクライナに攻め込んだのと同じ構図だ。ソ連崩壊後、ウクライナには大量の核兵器が残され、世界3位の核保有国となった。ところがウクライナは周辺国の善意を妄信し、保有する核を全て放棄してしまったのだ。プーチン氏も権威を取り戻そうが、生き残ろうが、政治生命は終わりである。自分の野心のために国民を騙して自国の軍隊を使ったのである。
これまで米国があまりに強大だったため、日本は日米安保条約で十分に安全が保たれると判断してきた。ソ連の強大さに立ち向かうには弱すぎた。こう考えると日米安保に加えた軽武装という構えで十分だったのではないか。またその後ソ連が瓦解したのも、日本にとっては幸運なことだった。
しかし2000年以降、中国が豊かになり、「台湾を獲る」と明言し出した。日本を取り巻く国際環境は悪化し始めたのだが、日本の左翼政党は中国を無視したままだった。そのため軍事情勢は政治の外に押しやられ続けた。
産経新聞とフジテレビが11月に行った共同世論調査では、相手国のミサイル発射拠点などを攻撃する「反撃能力」の保有について「持つべきだ」(62.1%)が「持つべきでない」(30.1%)を上回った。支持政党別でも自民党支持層の70.9%、立憲民主党支持層の53.4%、日本維新の会支持層の82.4%が保有すべきだと回答した。
立つべき時に立てない国は潰れるのだ。
(令和5年2月1日付静岡新聞『論壇』より転載)