どうにもならない共産党の危機

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 日本共産党が松竹伸幸氏を除名したことが話題になっている。松竹氏が共産党の党首を全党員の選挙で選ぶべきという党首公選論を党内で主張することなく、いきなり本にして出版したことが逆鱗に触れたわけだ。これに対して、朝日新聞や毎日新聞が社説でこの除名を「異論封じ」と批判し、それに共産党が反論するという応酬が続いている。
 松竹氏は、党首公選が実現すれば立候補するつもりらしいが、絶対に当選することはない。参院選でも落選したくらいだから。ただ共産党には、こんな問題にかまけている余裕はないのだ。
 今年1月に日本共産党は、第7回中央委員会総会(7中総)を開いた。ここで決めたことは、現在よりも130%大きい党づくりであった。なかでも最も力を入れていたのが、「しんぶん赤旗」や党員を現状より130%増やすということだった。志位和夫委員長によると約26万人の党員の約3分の1、約9万人は、1960年代、70年代に入党した高齢者党員だという。私と同じ団塊の世代であり、70歳代が中心ということだ。
 志位氏の報告によれば、130%の党とは、現在26万人の党員を36万人の党員にする、『しんぶん赤旗』の読者を90万人から130万人に増やすということだそうだ。志位氏は、「大事業であります。同時に、すべての支部・グループでこの事業を担うならば、来年1月の党大会までに、平均して、1支部あたり、現勢で、2ヵ月に1人の党員、1人の日刊紙読者を増やし、3人の日曜版読者を増やせば実現できます。『高い山』のように見えますが、みんなで担えば実現できる」と檄を飛ばしている。
 だが、ある程度の経験がある党員なら、「できるわけがない」と思ったことだろう。この種の運動を行なって目標を達成したのは、確か70年代に一度あるだけだ。その後、何十回とやってきたが成功したことは一度もない。志位氏の言っていることは机上の空論に過ぎないのだ。そもそも何十年も減り続けてきたのはなぜなのか。1980年には党員は50万人だった。「赤旗」読者は350万人だった。これ以来、40年以上減り続けてきたのだ。なぜそれが今、増勢に転じることができるのか。
 だが、どう考えても実現不可能な目標に対して、中央委員会総会で何一つ異論が出ないのだ。7中総の採決では、珍しく一人の棄権者が出たが、しゃんしゃんで決められたことに変わりはない。いまや共産党指導部は、無気力集団のようになっている。
 それから約1ヵ月経った2月3日に47都道府県の委員長を集めた会議が行なわれ、小池晃書記局長が報告を行なった。小池氏の報告によると入党の働きかけは4,323人、働きかけ支部は1割強で、入党申し込みは391人だったという。『しんぶん赤旗』の読者数は日刊紙339人減、日曜版208人減、電子版86人増となり、「党員も、読者も後退となりました」というのだ。増やす運動をやっていて減らしてしまったのだ。絶望的というしかあるまい。