東京五輪・パラリンピックの組織委はどうなっているのか

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 2月28日、東京地検特捜部は、東京五輪・パラリンピックの運営業務で大規模な談合があったとして、広告最大手の「電通グループ」や業界2位の「博報堂」、「ADK」、「東急エージェンシー」など法人6社と各社の担当幹部6人、大会組織委員会の大会運営局元次長の森泰夫容疑者の7人を独占禁止法違反(不当な取引制限)で起訴した。主要な広告会社がすべて談合に参加し、税金を食い物にしていたのだ。
 東京五輪・パラリンピックをめぐっては、昨年、スポンサー契約をめぐる汚職事件で、大会組織委員会元理事の高橋治之(元電通専務)容疑者が逮捕され、起訴されている。贈収賄事件でも、談合事件でも、結局その中心には電通が居座っている。電通にとっては、これらのことは当たり前のやり方だったのだろう。報道によれば、「電通」が入札を有名無実化して「電通の利益を最大化するよう社員を組織委に派遣すべき」などと記した資料を社内会議で共有していたというのだ。「電通五輪」だったのだ。
 2月26日のTBS報道特集が、談合問題など東京五輪・パラリンピックの経費膨張のカラクリを取り上げていた。それによると関連経費を含めると当初は7,340億円で賄うとされていたものが、3兆6,800億円へ約5倍に膨らんでいたというのだ。
 発注側の組織委員会にも電通などの出向者が陣取り、その出向者が受注側の電通などに発注するのだから、完全な出来レースなのであり、利益相反となる。利益相反とは、一方の立場では利益になるものの、他の立場では不利益になることをいう。そもそもこういう関係を作ってはならないのだ。
 TBSの報道では、元組織委員会職員の証言として、「運営だけではない。弁当、ホテル、バスなどもすべて当該企業から出向者が来て、その人物が自社に発注していたというのだ。会計検査院の検査によって、選手村で用意されたが廃棄された料理などが合計175トンもあったこと。組織委員会が期間中、ボランティアなどスタッフのために用意した弁当約160万食のうち約19%の約30万食が処分されたという。杜撰過ぎる。
 オリンピック憲章には、「オリンピック競技大会の開催地は、 規則 36 に明記するオリンピック開催地契約の規定に従い、大会の組織運営のため、責任を持って組織委員会 (OCOG) を設立しなければならない」とあり、組織委員会は作らなければならないことになっている。
 だが森喜朗元首相を会長とし、武藤敏郎元財務事務次官を事務総長とする東京五輪・パラリンピック組織委員会は、電通頼りをするだけで、自立的な運営能力を著しく欠いた組織であったことは明白である。組織委員会元理事が収賄によって逮捕され、組織委員会大会運営局元次長が談合で逮捕されたが、トップであった森元首相、武藤元事務総長、橋本聖子元会長らは、何の責任も問われていない。開催都市東京都の小池百合子都知事も同様だ。この人たちに五輪を語る資格はない。