空しいマツタケとシイタケの喧嘩

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 日本共産党が松竹伸幸氏や鈴木元氏を除名したことは、全国にいる党員の評判がすこぶる悪いようだ。先日も新潮社経由(私の自宅住所が分からないため)で共産党員歴61年という古参党員の81歳の女性から手紙を頂いた。私の『日本共産党』(新潮新書)や松竹、鈴木両氏の著書も読んだという。私に手紙を出すくらいだから2人の除名に反対だということだ。
 私は2人の除名に反対でも、賛成でもない。党員ではない私には関係ないことだからだ。ただ除名に反対の党員が全国では少なくないようだ。だから党内への影響を抑えるため共産党幹部や国会議員らが、口を極めて松竹、鈴木両氏を罵る言動を繰り返している。
 例えば埼玉県選出の伊藤岳参院議員は、共産党後援会の集まりで、次のように語っている。〈権力の側がやってきたのは党の内部にまで手を突っ込んで、党の中から撹乱しようということ。松竹問題です。本を出さないか。インタビューに応じないか。色々攻勢をかけてきた。これに応じて本を出したんです。完全に権力の側に取り込まれている。〉
 無知蒙昧だから嘘八百を平気で言えるのだ。私が真相を教えてあげる。松竹氏の『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を出版する際、松竹氏から「筆坂さん、新潮社の出版関係の方を紹介してくれませんか」という相談があり、新潮社のある人を紹介した。しかし、「党首公選と言っても実現の可能性は低いでしょう」ということで断られたらしいのだ。そこであちこち当たって、文藝春秋が引き受けてくれたということだ。伊藤岳の話は大嘘なのだ。
 元参院議員の市田忠義氏も、「共産党員は、自らの意思で、綱領、規約を認めて入党する。松竹氏は、党首公選を主張したために除名されたのではない。自ら承認した綱領・規約を踏みにじり、党を攻撃・撹乱しようとしたために、しかも、党に悪罵を投げつけている鈴木氏らと連携し、分派的にそれらをおこなったからだ」と語っている。
 鈴木元氏と市田氏は立命館大学のOBである。党内では市田氏の方が先に京都の党のトップになり、書記局長にもなったが、昔から犬猿の仲だったそうだ。私も市田氏と同時期に参院議員をしていたのでよく知っているが、頭の切れる人ではない。野党の国会議員にとって一番の晴れ舞台は、NHKで生放送される予算委員会の総括質問だが、その1ヵ月前ぐらいになると必ず自信のない市田氏が、「筆さん!お願いします」と頼んできたものだ。鈴木氏との論争でもいつも言い込められていたのだろう。まだ同氏が除名される1ヵ月も前の2月5日に自身のFacebookに、「鈴木元氏も予想していた通りの転落ぶりですね。『俺が俺が』の人物の哀れな末路を見る思いが」と投稿し、慌てて削除した。
 松竹氏は党首公選と言うが、それで本当に良くなるのか。志位氏はいつものように共産党や自分は「正しい」と強調している。だが国民の支持はない。そう言えば長野俊郎さんが言ってたな。“マツタケと志位(シイタケ)の喧嘩”と。