「日米韓首脳会談と北中露の脅威」

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政策提言委員・拓殖大学客員教授 高 永喆

 韓半島の南北を分断する休戦ラインは、大陸勢力(北中露)と海洋勢力(日米韓)が力のバランスを保つ緩衝地帯であり境界線だ。サッカー場のセンターラインと同様だ。故に、休戦ラインは世界で最も軍事密度(Militarily Density)が高い。
 8月18日、米キャンプデービッドで日米韓3ヵ国の首脳は安保、経済分野の協力強化を約束した。 先端技術を主導し、世界のGDPの32%を占める日米韓が安保、経済分野でシナジー効果を発揮できる画期的な首脳会談だった。
 価値観を共にする自由民主主義国家、日米韓3国の連帯が北中露を牽制する大きな契機となった。 
 因みに、8月23日、ロシアの軍事会社ワグネルグループ代表、プリゴジンと参謀10人が搭乗した航空機がモスクワ付近で撃墜された。 2ヵ月前にプーチン大統領に対するクーデターを起こしたプリゴジンがプーチンによって除去されたのだ。 過去にもプーチンは反対派政敵を毒殺、投獄した前例がある。 
 北朝鮮の金正恩も執権初期に叔父、張成沢氏を残忍に処刑し、兄、金正男氏を毒殺し、党軍幹部300人以上を処刑した前例がある。 
 中国も林彪国防部長兼副総理が毛沢東除去クーデターを計画したが、ばれてソ連に脱出する途中モンゴル上空で墜落死亡した前例がある。 
 また、ポーランドの親欧米派で、反ロシア路線を選んだレフ·カチンスキー大統領も2010年にロシア上空で墜落死亡したことがある。 ロシアは選挙によって選出された大統領を持つ民主共和国だ。ところが、政治形態は長期執権独裁権力体制だ。 中朝露は表面的には民主主義・人民共和国であり政党制国家である。しかし、統合ロシア党と、中国共産党および北朝鮮労働党は一党長期執権の独裁体制であることが分かる。 他の政党は長期独裁政権を支持する衛星政党に過ぎない。
 北中露は政権交代のない長期執権体制であるため、軌道修正が出来ない。 北中露の長期独裁と統制経済が自由民主国家の市場経済に追いつけない理由がここにある。 
 特に、北中露の長期独裁政権は、外に敵を作って国民の敵愾心を唆して、国内危機を助長する共通点がある。 
 危機造成は長期執権に対する国内反対世論を鎮め、国内結束をもたらし長期独裁を可能にする。 
 プーチン大統領がウクライナに侵攻した狙いも、NATOの影響力拡大阻止の名分で危機を造成し、プーチン政権の永久執権を強化しようとすることが主な目的だろう。 
 故に、プーチン大統領が次期選挙で再執権するまでは休戦協定は難しいと考えられる。 
 習近平の台湾武力統一発言も同じ脈絡だ。 
 北朝鮮の金正恩もミサイルを連射する目的は、3代世襲長期独裁体制を永続化させる狙いだろう。8月9日、戦争準備命令を下したのも危機を造成して、国内結束を固めなければならないからだ。北朝鮮が随時大規模軍事パレードを行う目的も、国内外の誇示用である。 
 最近、台湾は中国内陸の三峡ダムを破壊できる巡航ミサイルを試射した。三峡ダムが破壊されれば、揚子江流域が水没する大惨事になる。台湾は海抜3千メートルの高山が全国に散在する天恵の要塞国家だ。台湾海峡も米海軍力が強力な抑止力になっている。 結局、中国の台湾侵攻は国の存亡がかかった冒険であり不可能である事が分かる。したがって、習近平の台湾武力統一発言は長期執権体制維持を狙った政治的なプロパガンダであることが分かる。 
 7月27日、北朝鮮は休戦記念式典でプーチン大統領が言及した核兵器使用の可能性を示唆した。戦略核であれ戦術核であれ、 万が一、一国が核攻撃を受けると、核搭載潜水艦(SSBN•SSGN)から発射する二次核報復、相互確証破壊(MAD)によって共倒れを招かせざるを得ない。恐怖の均衡が核兵器使用を抑止している。相互確証破壊の恐怖を北中露はよく知っているはずだ。にもかかわらず、核恐喝を繰り返す目的は危機造成で国内結束を固め、長期執権体制を強化しようという狙いだろう。故に、今後も北中露の危機造成は変わらず続くだろう。 韓米同盟と日米同盟強化が何よりも肝心だ。(ママ)