私は今回のシンポジウムを通じて、台湾との関係強化と戦略的コミュニケーションの重要性について深い理解を得えることができた。加えて、日本の安全保障における台湾の重要性、軍備増強を図る中国に対峙するには日台間の連携が不可欠であることを再確認することができた。
台湾との安全保障に関する対話を促進するための枠組み作り、情報共有や人材交流など、双方の信頼関係を深めるために取り組むべき施策は山ほどある。将来、起こり得るであろう台湾有事に備え、台湾との関係強化を図るには、平時からの整備が必要であることを強く実感した。
また、戦略的コミュニケーションに関する議論も非常に有益だった。現代戦では情報戦や認知戦が重要である。そんな中で日本の立場や安全保障体制について国際社会からの理解と協力を得るには戦略的コミュニケーションが欠かせない。そして、これらの課題に対処するためには、政府が総合的組織を構築し、関連機関や自衛隊との連携を強化して、計画的で持続可能な戦略的コミュニケーションを形にしていく必要がある。
さらに、戦略的コミュニケーションの内容や手段については、SNSなどの新しいメディアを有効的に活用することが重要であると思われる。しかし、SNS には、間違った情報や偏った情報が拡散される危険性もある。そのため、戦略的コミュニケーションの情報源や信頼性の追究に努めることが何より大切であると思われる。
私は今年の夏休みにフィールドワークで台湾を訪れた。その際、地方自治体や学校で中国による武力侵攻を想定した避難訓練が頻繁に行われていること、多くの建物の地下をシェルターとして活用できるよう整備が進められていることを知った。そして、台湾の人々の安全保障に対する関心の高さに驚かされた。安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事」と述べたが、私たち日本人の台湾有事に対する危機意識をいかにして高めていくかも重要な課題であろう。その意味において、今回のシンポジウム、そして政策シミュレーションは安全保障に対する国民の理解を一層深める契機となったのではないかと感じた。