第47回定例シンポジウム
「台湾海峡危機 ―日本の備えと役割―」に参加して

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拓殖大学政経学部法律政治学科2年 伊藤航生

 私が今回のシンポジウムで学んだことは、台湾海峡危機において日本が取るべき行動についてです。昨年、米国下院議長が台湾を訪れ、蔡英文総統と会談した際、これに反発した中国が台湾周辺海域で大規模軍事演習を実施し、弾道ミサイル5発が日本のEEZ内に落下しました。確実に台湾海峡の緊迫度は増していると感じています。
 このような状況の中で実施された政策シミュレーションにおいて、その中心を担った方々の報告を聞けたことは非常に有益でした。
 1つ目のシナリオである「ハイブリット戦の始まり」では、先島諸島の海底ケーブル切断や与党議員に対するサイバー攻撃など「表向きには軍事力を伴わない行動」への対応を学ぶことができました。
 2つ目のシナリオである「台湾有事はわが国有事」では、国民保護についての学びを深めることができました。中でも民間人輸送に当たる海上保安庁の巡視船に掲げられる「国民保護標章」の認知度が極めて低いことは非常に問題であると感じました。そして「このマークを赤十字のように世界に認知される規範を日本が作っていこう」という意見が強く印象に残りました。
 3つ目のシナリオである「エスカレートする武力攻撃事態」では、例えば、台湾海峡危機が起きた時に台湾に向かう米軍が在日米軍基地を使用することに日本国内で反対意見が出た場合に、いかに対応すべきかなどに関する議論が特に興味深く聞けました。
 この他にも台湾から先島諸島に人々が避難して来た場合、その島の治安維持を誰が担うのか、避難民の中にスパイやテロリストが含まれていた時に、どのように対処するかについて、日本政府としての方針が明確に定まっていないことに強い不安を覚えました。
 私は、日本戦略研究フォーラムの永久最高顧問である故安倍晋三元首相が指摘された「台湾有事は日本有事」という言葉を多くの国民が重く受け止め、台湾海峡危機を日本の危機であると認識することが重要であると思いました。そして今ある独立、平和、主権の尊さを噛み締め、これらを守るために私たちは何をすべきなのかを考えながら、この問題と向き合っていきたいと思いました。