人民解放軍海軍 (中国海軍) が日本と台湾付近をパトロール

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マンスフィールド・フェロー/米海軍士官 アンドリュー・オーチャード

2024年1月3日、フィリピン海に向けて奄美大島付近を航行中の中国海軍軍艦 
2024年1月3日、フィリピン海に向けて奄美大島付近を航行中の中国海軍軍艦
 
 政治は屡々海軍艦隊の運用(戦争の作戦レベル) に変化を引き起こす。 海軍戦略家の故ウェイン・ヒューズ大佐は次のように述べている。「戦争の作戦レベルでの不確定要素は技術ではなく、社会的、政治的変化に起因する」。
 東シナ海南部と台湾周辺での中国海軍の東部戦区海軍のパトロールは、恐らくこの論理に従ったものと思われる。 過去数年間に行われたこうしたパトロールの確立は、制海権を握る海軍へと地位を向上させ、中国の主張を強化することを目的としていると考えられる。
 東部戦区海軍は毎日、日本と台湾の近海を巡回する8つの戦闘艦(それぞれ3隻と5隻)を維持している。 これらのパトロールには、東部戦区海軍のコルベット艦、フリゲート艦、駆逐艦の14% が毎日航行する必要がある。この兵力要件は、中国海軍が 東部戦区海軍に 054A 型(ジャンカイII)フリゲート(FFG)の最新生産バッチ10 隻のうち6隻を割り当てたことを説明している。
 東部戦区海軍はADIZ設立後にパトロールを開始したとされており、東シナ海のパトロールは中国が主張する防空識別圏(ADIZ)の近くで行われていると伝えられている。さらに、日本政府の一部には、尖閣諸島への近さを考慮すると、このパトロールは尖閣諸島をめぐる中国政府の主張にも関連しているとの考えもある。 人民解放軍海軍と中国海警局の間の緊密な連携により、(最近の当局の変更にも拘わらず)日本の法律も考慮すると、これらのパトロールは日本にとって問題となる。 東部戦区海軍のパトロールに匹敵するには、海上自衛隊(海自)はフリゲート艦と護衛艦の7%をこの任務に充てる必要がある。 このような運用上の需要を満たす部隊を維持することが、海上自衛隊が護衛部隊の近代化を進める理由の一部となっている。
 
中国海軍による日本・台湾近海の海上パトロール数(毎月平均2022年8月~2024年1月)
中国海軍による日本・台湾近海の海上パトロール数(毎月平均2022年8月~2024年1月)
 
 同様に、台湾周辺のパトロールは、台湾をめぐる中国の主張を強化することを目的としている。 さらに、これらのパトロールは中国海軍の能力を実証し、それに応じて台湾当局に限られた海軍資源を(航海の日と作戦テンポで)消費させることを意図している可能性が高い。 中国政府はまた、演習中の中国海軍活動の増加をメッセージとして、他国の台湾への関与を阻止するために利用する可能性が高い。 2022年8月5日に台湾政府がこの活動に関する日報を発表し始めて以来、東部戦区海軍は台湾周辺で戦闘艦5隻のプレゼンスを維持している。1対1の状況であれば、台湾当局は中華民国海軍のフリゲート艦と駆逐艦の19%を航行させ続けることができるだろう。 海自と同様に、中華民国海軍は 康定級フリゲート艦のアップグレードと新世代軽フリゲート・プログラムによって部隊の近代化を図ろうとしている。
 東部戦区海軍のパトロールは間違いなく継続され、増加していくだろう。 東部戦区海軍は今後数年間に少なくとも4隻の055型巡洋艦(レンハイ)CGを就役させる予定だ。 この追加により、東部戦区海軍はパトロールを強化したり、新しいミッションを確立するため柔軟性が得られる。どちらを選択しても、台湾政府と日本政府への圧力を強める一方で、中国政府の主張を強化することになる。
(英語版は2024年2月1日、The Diplomat に掲載された。https://thediplomat.com/2024/02/chinas-navy-patrols-near-japan-and-taiwan/)
 
※アンドリュー・オーチャードは米国海軍士官であり、現在はマンスフィールド・フェローである。 記事内で表明された見解は著者独自のものであり、必ずしも米国海軍、米国防総省、米国政府、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団、日本戦略研究フォーラム(JFSS)、日本政府の公式の政策や立場を反映するものではない。