本共産党が今年1月の党大会で、松竹伸幸氏が提出していた除名処分の撤回申請を却下したことはよく知られている。党大会では、松竹氏らを擁護する発言は徹底的に非難された。共産党の党大会は、全会一致で方針が決められていくのが通例だったが、この党大会では最後の採決で数人の反乱者も出た。松竹氏への処分に異議ありというのが、その理由だ。
この問題はまだまだ終わらない。3月7日には、松竹氏が処分の撤回を求めて東京地裁に日本共産党を提訴した。裁判は6月20日から始まるが、共産党内に大きな影響を与えているようだ。普通、党大会を終えると次の大きな会議まで、約1年程度の期間が空けられるものだが、今回は違う。党大会が終ってわずか10数日後の2月6日には、全国都道府県委員長会議が招集され、さらに4月6日には、第2回中央委員会総会(2中総・にちゅうそう)が招集された。なぜこんなに頻繁に会議を招集するのか。理由は2つだ。
1つは、志位和夫中央委員会議長が党大会の閉会挨拶で「党大会が歴史的成功をおさめたことを、心から喜びたい」と述べたが、成功どころか現実にはその大会決定文書を読まない党員が多数おり、党員や「赤旗」の拡大運動も一向に進んでいないからである。
2中総の議題は、「党勢拡大のための全党への手紙」の討議とその他とされていた。だがネット上の記事によると、この会議で松竹氏らの除名処分と党内への影響について小池晃書記局長の「秘密報告」があったと言うのだ。共産党側はこのネット記事について否定していない。
「秘密報告」は、要旨を次のように言う。
――松竹・鈴木らによる一連の撹乱行動やマスコミ報道の影響を受けて、綱領や規約に確信を失っている党員が全国的に生まれている。
――その背景には党大会決定の無理解、徹底の不十分さによる敗北主義がある。
――これは階級闘争の過程では不可避の事態であり、攻勢的に打開する。
これが2つ目の理由、松竹問題だ。「攪乱」「敗北主義」「階級闘争」など、いつの時代の文書かと戸惑う大仰さだ。焦っている。確かに除名の影響は大きいようだ。松竹氏のブログによれば、共産党の中枢にある「赤旗」編集局の記者の中に、編集局を辞め、松竹氏が務める京都の「かもがわ出版」に勤務したいという人が複数人いるというのだ。
党大会で大山奈々子神奈川県議が、「規約に反したことをしていたら、当然、処分もありえるのでしょうが、それが除名なのか。犯罪を犯したわけでもない人に、この処分の決定の早さとその重さについて、疑問をもつ仲間は少なくありません」と除名に異論を述べた。これに対して「赤旗」政治部長が、「これは極論すれば、殺人や強盗でもしない限り除名はないということになります。党破壊攻撃をどこまでも許せという論理になりかねない」と呆れる反論をしたのだ。これでは多くの党員が大山県議に同調するのも当然だ。お粗末日本共産党というところか。