蓮舫参院議員の都知事選への立候補表明をテレビで見た時、「これは面白くなるな」と瞬間的に思った。小池百合子現都知事は、相当なやり手であり、ちょっとやそっとの候補者では相手にならない。
蓮舫氏も語っていたように8年前に初めて立候補したときは、「格好いい」と私も思った。自民党や公明党が応援した増田寛也氏や民進党や共産党が応援した鳥越俊太郎氏を相手に、政党の推薦を受けずに圧勝した。2020年都知事選では、小池氏は366万票を獲得して再選を果たした。小池氏以外に100万票を超えた候補者はいなかった。
だがその小池氏にも陰りが見えてきた。最近の選挙では、小池氏が応援した候補者がことごとく負けている。最早、小池氏の神通力はなくなったように思える。もともと小池氏人気と言っても、確たる根拠があったわけではない。パフォーマンスの上手さが際立っていただけだ。毀誉(きよ)褒貶(ほうへん)はあるが蓮舫氏なら知名度、政治経歴共に小池氏に引けを取ることはない。
ただそれよりも何よりも蓮舫氏への共産党の肩入れが異常なのだ。立候補を表明した5月27日、小池晃書記局長が「最強、最良の候補者を得ることができた。『反自民』『非小池(百合子知事による)都政』。旗印は明確だ」と述べた。さらに小池書記局長は、「今日の午前中の共産党常任幹部で応援することを確認した」と語った。蓮舫氏が立候補表明する前に応援することを決めていたということだ。蓮舫氏や立憲民主党側から、前もって共産党に打診があったということだろう。
29日に東京都議会に挨拶に行った蓮舫氏に対する立憲民主党や共産党の都議団の出迎え方もあまり例のないものだった。立憲民主党の都議団は静かに迎え、拍手もパラパラだった。ところが共産党都議団の控室に行くと大山とも子都議団長を先頭に多くの都議が満面の笑みで迎え、花束まで贈呈していた。驚いた表情を見せた蓮舫氏だったが、すぐに満面の笑顔を浮かべ「立憲の子からも、もらっていないのに」と語ったのだ。立憲民主党の都議を子ども扱いするような言葉に、党内からは「蓮舫さん、相変わらずだなあ。あれはダメだよ」との声が上がったそうだ。
それにしても共産党の肩入れの強さが分かろうというものだ。この一連のシーンについて新潮の記者から「どう思います」という電話があった。私は率直に「喜びすぎだ」と言った。共産党の東京都委員会には「東京民報」という機関紙がある。この号外が出た。蓮舫氏の写真を前面に出し、「小池都政をリセット 新しい政治へ 東京から、変える。蓮舫参院議員 都政に挑戦!」とある。
だが共産党の肩入れの強さが勝利につながるかどうかは別問題だ。6日付産経新聞コラム欄「一筆多論」に酒井充政治部長の「今こそ『立憲共産党』だ」という記事が掲載されていた。その結論は、綱領も新しくして立憲共産党として野党の旗を掲げたらどうか、というものだが、こういう指摘は間違いなく多くなるだろう。