ちょうど1年前の「市谷レポート」にマイナ保険証の問題点について書いた。再び書く。政府は今年12月2日をもって現行の健康保険証の発行を終了することを決めている。あまりにも乱暴だ。マイナンバーカードは、持つか持たないか本人の意思で決める任意のものだ。健康保険証は違う。皆保険のわが国では誰でも持っているし、持たなければ適切な医療を受けることが出来ない。この2つは全く違うのだ。
ポイントを餌にして無理矢理マイナカード保有者を増やしてきたが、それでも人口の74%、約9278万人だ。厚労省によれば、マイナ保険証の今年4月の利用率はわずか6.56%だったという。
マイナンバーカードはそれなりに普及したが、健康保険証と一体化させている人は極めて少数ということだ。私も一体化させていない。私はほぼ毎月、呼吸器科、内科、泌尿器科に通院し、10種類以上の薬を調合してもらっている。保険証とお薬手帳を出せば、薬をいただける。何の不都合もない。先日、マイナ保険証も使える調剤薬局でこんな出来事があった。私は処方箋とお薬手帳を出して待っていると同年配の男の人がやって来て処方箋を出した後、マイナ保険証の読み取り機があるのに気づいてカードを挿入した後、顔認証のカメラが付いているため自分の顔を撮ろうとするのだが上手く行かず、そのうち薬局の人が「もういいですよ」という声をかけて終了した。
マイナ保険証で顔認証などというとますます年寄りには難しくなるだけだ。
日本はデジタル化が遅れていると言う意見も少なからずある。だがIT導入コンサルタント企業ベルケンシステムズ(株)代表取締役鈴木純二氏は、「半導体製造装置では日本はシェアトップを維持してきています。ロボットなどの製造の自動機についても日本は驚異的な強さを保っています。(略)デジタル化著しい自動車でも今のところ戦いを優位に進めています」と語っている。
政府は、日本はデジタル後進国だからとしてマイナンバーカードの普及、健康保険証との一体化を進めているが、こんなことを行なっているのは先進7ヵ国(G7)の中で日本だけなのだ。昨年、7月、当時の加藤勝信厚労相が、国会で「G7では、異なる行政分野に共通する個人番号制度を有した上で、個人番号を確認できるICチップ付きの身分証明書となるカードを健康保険証として利用できる国は、わが国以外はない」と答弁している。グローバルスタンダードでも何でもない、日本独自のものということだ。
厚労省は今、「利用促進集中取組月間」とし、12月の保険証廃止に向け利用拡大キャンペーンを行なっている。そのため利用率が診療所や薬局に10万円、病院に20万円の一時金を出すことにしたが、それでも進まないので一時金を20万円、40万円と倍に上げる措置までとっている。マイナカード取得にポイントを付与するのに1兆3800億円、マイナ保険証の普及に887億円も使っている。どこまで無駄づかいをする気かと言いたい。