こんなに失敗ばかりの指導者も珍しい。日本共産党の志位和夫議長のことだ。志位氏は、3年前の衆院選で選挙の性格を「政権交代選挙」だと命名した。当時の「しんぶん赤旗」の報道を見ても、どの候補も「政権交代選挙」と叫んでいた。だがこんなことを言っていたのは共産党だけだった。共産党というのは面白い政党で、ほとんどの場合、方針などを考えているのはトップだけなのだ。つまり志位氏だけということだ。国会議員も候補者も、党員もそれを“正しい方針”だと思うように慣らされているのだ。
この時もそうだった。兵庫県で女性後援会の決起集会があった際、元参院議員の大沢辰美氏が挨拶で「すごい時代になりました。今度の総選挙はこれまでとは違います。政権を獲ることを目標にした選挙です」などと檄を飛ばしていた。参院議員まで務めた彼女だが、本当にそう思っていたのだ。どこでも同じことがやられていた。だが結果は、政権獲得どころか2議席減の10議席だった。「政権交代選挙」というピントはずれの位置付けをしてしまったことが大失敗の要因だった。今回の選挙でもまたも志位氏は、ピントはずれの方針を打ち出してしまった。
1つは「野党外交」なるものだ。不破哲三氏がトップの時に盛んに自慢していたことだ。私も同行したことがあるが、中国には簡単に裏切られ、チュニジアやパキスタンは、日本共産党が訪問後、いずれも大統領が国民の批判で放逐されていった。もともとクーデターで大統領になった人物だった。志位氏もASEAN本部やインドネシア、ドイツ、フランス、イギリスなどを訪問したことを「野党外交」と自慢し、選挙ビラにまで載せていた。これが得票増につながるとは到底思えないものだ。
もう1つは、共産主義とは何か、を前面に押し出したことだ。選挙ビラを見て驚いた。「『人間の自由』が豊かに花開く 共産主義の一番の目的はここにあります」と書かれていたからだ。志位氏は、都知事選挙の最中に全党に対して「共産主義=自由」「共産主義=自由時間論」なる講演を行い、その学習を呼びかけていた。そして『Q&A共産主義と自由 『資本論』を導きに』という本を出版していた。共産主義、社会主義の日本など、誰も展望していない。
日本共産党もそうだ。21世紀の早い時期に実現したいとしている共産党が与党になる「民主連合政府」ですら、まったく展望すらできない。共産党から除名された鈴木元氏は、「共産主義についての願望的作文を述べるのは現実の日本における厳しい政治闘争からの逃避である。それらを本としてまとめ発売した。それどころか衆議院選挙の最中、京都をはじめ街頭演説においてこの本を片手に持ち宣伝し講読を訴えた。
こんなバカげた言動を行う人を党首として担いで選挙での前進などありえない」と厳しく批判している。この愚かな指導者のもとで小選挙区候補213人中143人が供託金没収となった。1人300万円なのでその額は4億2900万円になる。党員が気の毒だ。