ロシア国民や北朝鮮の国民には同情するしかない。ロシア連邦は、共産党一党独裁の社会主義体制であったソビエト連邦が崩壊して誕生した。だが2003年以降ウラジーミル・プーチンが率いる「統一ロシア」による一党優位体制が確立され、政治的意思を自由に表明することは困難体制となっている。それどころか福田ますみ著『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(2010年12月発行 新潮社)でも詳細に明らかにされたが、プーチン批判を行ったジャーナリストが次々と暗殺されていった。
反体制派の指導者だったナワリヌイ氏も長く投獄され、昨年2月獄中死した。政敵を次々と暗殺するのはプーチンの常套手段なのだ。
北朝鮮の正式名称が朝鮮民主主義人民共和国というのには笑うしかない。金日成、金正日、金正恩と絶対的権力を握ってきたのは金一族である。世襲独裁体制とでも呼ぶべきだろう。これは旧ソ連や中国、ベトナムでもなかったことだ。まるで金王朝である。金正恩は、自らの体制を強固なものにするために、実の兄を暗殺し、叔父を死刑にした。
防衛省のシンクタンク防衛研究所は、2017年に「独裁化と粛清を通じた恐怖政治が続いている」と分析している。個人の自由というものが一切ない社会なのである。
ウクライナへのロシアの侵略戦争を通じて、この両者が結びつきを強めているというところに、今日の厄介さがある。だがこの結びつきは、両国ともに窮地に追い込められている証でもある。
1月6日付産経新聞が詳報しているが、ロシアがウクライナ侵略に被った代償は大きい。①ロシアは早期にウクライナを降伏させることに失敗し、軍事大国としての威信に傷をつけた。②従来中立を維持してきたフィンランドやスウェーデンをNATOに加盟させてしまった。その結果、バルト海を「NATOの海」にしてしまった。③ロシアと軍事同盟を結ぶアルメニアに対して、アゼルバイジャンが地域奪還作戦を行ったが、ロシアはウクライナ侵略に戦力を投入しているため、アルメニアを助けることができなかった。その結果、同盟関係は事実上停止している。シリアのアサド政権の崩壊でも何もできなかった。
何よりも悲惨なことは、ロシア兵の戦死である。ロシアは正式な発表はしていないが、米欧やウクライナ、専門家などの分析によると戦死者だけでも10万人を超えているとみられている。負傷者はこの数倍に上る見通しだという。
このウクライナ侵略にあろうことか、ロシアのために自国の若者を兵士として派遣したのが金正恩である。ウクライナ軍が越境攻撃を行っているロシア西部のクルスク州では、1万人を超える北朝鮮軍の兵士がロシア軍とともに戦わされている。ウクライナのゼレンスキー大統領によれば、クルスク州でのウクライナ軍との戦闘による北朝鮮軍の兵士の死傷者は3,000人以上に上るという。自国の若者を何の大義もない戦争に駆り出し、死亡させる。こんな愚かな指導者に鉄槌を下す年にしなければならない。