民主の盾:第一列島線・全社会レジリエンス協力
国際フォーラム参加報告書

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お知らせ JFSS事務局

標記について報告する。会議はチャタムハウス・ルールに基づいて実施された。
フォーラムに先立ち、日本戦略研究フォーラム(JFSS)と福和会の協力に関する覚書を交換した。
1 日時
     2026年5月11日(土)〜13日(月)
   5月11日(土)08:30〜14:50 フォーラム
   15:00〜16:00 メディア・インタビュー
   5月12日(日)終日、現地研修(後述)
   5月13日(月)08:30〜09:30 賴清德総統表敬訪問
 
2 場所
  台北市、ホテル・リージェント・タイペイ
 
3 参加者
  特別顧問 岩田清文、武居智久
 
4 フォーラムの内容
(1)主催
   福和会(Formosa Republican Association, FRA)
(2)フォーラムのテーマ
   第一列島線:防衛ラインにおける有事発生時の同盟国、パートナーと米国の役割分担
 
5 会議の内容
(1)理事長挨拶 陳彦升
   多国間協力で第一列島線防衛をする意義を強調した。
 
(2)名誉理事長挨拶 林逸民
 台湾が第一列島線の重心にある以上、必然的に我々は自らの義務を担う必要がある。
 関係国で、より深い経済および技術的な結びつき、重要技術とインフラのセキュリティに関するより良い計画、そしてより集団的な この情報に対する対応。また、それは今、健全な協力を構築することを意味する。我々には、危機が起こる前に準備する時間はほとんど残されていない。権威主義的な政府は、民主主義が分断されているか、あるいは対決する意志がない時に、しばしば戦争に向けて動くものだ。 
 平和は、責任ある国家が連帯を示す時に持続する。連帯と備えが重要。したがって、私たちが日本、韓国、フィリピン、台湾、米国は、強制ではなく、人々の選択によって地域の平和のために立ち上がることだ。第一列島線全体での協力を強化することによって、私たちは安定を維持するだけでなく、 インド太平洋全域において、自由、安全、そして人間の尊厳が永続する未来について、私たちは次の世代に対して責任がある。
 
(3)A氏の講演概要
 第一列島線の戦略的重要性に鑑み、民主主義諸国が協力して「民主主義の盾」を構築すべきだ。永続的平和は信頼できる抑止力に基づき、宇宙から海底まで統合された監視網や無人システムの供給体制が必要である。台湾は半導体や電子技術、AI能力などで強みを持ち、民主主義サプライチェーンの中核的ハブとして重要な役割を担う。
 第一列島線は戦争のためではなく、紛争を防ぐためのネットワークであり、共同訓練・共同統治・共同対応の場として機能する。フィリピンも南部の結節点として災害管理や物流、沿岸警備など非軍事的協力を通じて信頼構築に寄与することができる。真に効果的な抑止力は兵器数ではなく、研究・製造・保守・訓練を統合した包括的枠組みに依存する。
 第一列島線は安定と協力、自由の鎖となり、民主主義諸国が相互信頼を基盤に防衛と平和を確立するための戦略的空間である。
 
(4)B氏の講演概要
 第一列島線はインド太平洋における決定的な地形であり、琉球からフィリピン、台湾を経て南シナ海に至る島々の弧は自由の防波堤だ。
 米国、日本、オーストラリア、フィリピンなどの同盟国は、包括的な共同防衛計画へ移行すべきであり、そのために4つの柱が不可欠とされる。第一に、標準化された武器交換プロトコルと相互補給体制。第二に、電子戦やサイバー攻撃に耐える強靭な通信ネットワーク。第三に、各国が共に行う訓練と演習。第四に、常設の統合兵站メカニズムである。
 これらは装備の事前配備、共有拠点、共通基準、リアルタイム追跡システムを含む。課題は各国の異なる交戦規定や指揮統制の制約であり、平時からの共同訓練が不可欠とされる。特に台湾を多国間演習に完全参加させることが強調され、相互運用性と信頼構築が抑止力の鍵となる。
 第一列島線は単なる地理ではなく、人・技術・プロセスのネットワークであり、領土と主権、国民の安全と繁栄を守る使命の象徴である。議論から行動へ移り、軍備・通信・兵站を強化し、台湾を含む全てのパートナーと共に訓練することで、抑止力を維持し平和を確立できる。
 
(5)C氏の講演概要
 韓国の軍事体制は米韓連合司令部の下で運用され、戦時には単独で戦うことはなく、米国司令官と韓国副司令官が統制する特異な仕組みを持つ。歴史的にアチソン・ラインの外側に置かれた韓国は、1950年の朝鮮戦争を経験し、以来70余年にわたり米韓同盟の中心は北朝鮮の脅威への対応であった。北朝鮮は核実験と弾道ミサイルを保有し続けており、防衛は依然として重要課題だ。
 しかし2017年以降、インド太平洋戦略やQuadの活性化に伴い、在韓米軍の「戦略的柔軟性」が強調され、台湾や中国への対応にも活用され得るようになった。中国が台湾で紛争を起こす際には、在韓米軍の転用を阻止するため朝鮮半島で紛争を誘発する可能性が指摘される。地域で紛争が発生し得る場所は台湾、朝鮮半島、尖閣、南シナ海の4カ所であり、特に台湾が最も危険視される。韓国は経済的に中国依存度が高く、立場は複雑だが、軍事的には米国との互換性や共同訓練で深く結びついている。
 韓国、日本、台湾、フィリピンは単一の戦域として連動し、米国が中心となる枠組みが不可欠である。災害・人道支援訓練や情報共有を通じて平時から協力体制を強化することが求められている。
 
(6)元海上幕僚長 武居智久海将(退役)の講演概要
 第一列島線は中国の太平洋進出を阻止する防衛バリアーであり、失敗すれば中国の影響力は第二列島線から西太平洋・インド洋へ拡大する。防衛の中心は台湾であり、台湾有事の抑止と対処、航行の自由確保が戦略目的となる。中国は検疫や封鎖、離島占領など低コストの威圧戦略を用いる可能性が高く、台湾は国家総力戦を強いられる。
 台湾の脆弱性はエネルギー・食料の低自給率と半導体産業への依存であり、海上交通遮断は台湾経済と世界経済に深刻な影響を及ぼす。したがって台湾は通商保護を国家戦略に組み込み、備蓄や産業動員計画を整備すべきだ。
 課題は米国のコミットメントの不確実性、同盟関係の弱い国々との信頼構築、国連安保理の機能不全、国家総力戦への備えである。
 軍事面では距離の制約、共同演習不足、A2/ADによる米軍展開阻害、武器弾薬の不足、新技術の高速化が挙げられる。対策は共通C4ISRTシステム、A2ADネットワーク化、共同備蓄、産業基盤の相互運用性強化、サプライチェーン多角化、石油・LNG共同輸送体制の構築などである。結論として、第一列島線防衛は台湾を中心に政治・軍事・産業を統合した多国間協力が不可欠である。
 
(7)元陸上幕僚長 岩田清文陸将(退役)の講演概要
 第一列島線防衛に関する戦略的連携は重要である。第一列島線は単なる国別の問題ではなく、台湾、日本、フィリピン、韓国を含む広域戦域として捉えるべきだ。台湾有事は周辺国全体に影響し、北朝鮮やロシアも動く可能性があるため、各国の抑止力を調和させる必要がある。
 アメリカは同盟国・パートナー国と連携し、港湾アクセス拡大、防衛費増額、侵略抑止投資を求め、列島線上の拠点や兵站を結びつける構想を示している。日本は南西諸島を中心に防衛強化を進め、在日米軍の戦力投射や後方支援を担う立場にある。フィリピンは南シナ海・バシー海峡で重要な役割を果たし、日本との情報・兵器ネットワーク構築が期待される。韓国は北朝鮮抑止と後方支援で列島線の厚みを増す。さらに5か国間の情報共有ネットワークや対艦・対空兵器の連携が抑止力を高める。中国が南シナ海に要塞を築き制空権を握る現状を踏まえ、米国のコミットメントと各国の協力で中国の突破を阻止することが必要だ。日本はロシア・北朝鮮・台湾の三正面を見据え、米国やフィリピンと共に列島線全体を防衛し、「自由の盾」として中国に対し強い抑止を示すべきだ。
 
(8)D氏の講演概要
 危機管理学者ラガデックの洞察を引用し、危機対応は事前に構築された構造に依存することを強調した。第一列島線は自然災害と地政学的緊張が交差する戦略的回廊であり、備えは国家単位から多国間の相互運用可能なシステムへ進化すべきだ。
 必要なのは「シナリオに基づいた備えプログラム」であり、最悪のシナリオを含む複数の未来を想定し、状況認識・戦略・指揮統制を明確化する。組織・訓練・装備を整え、段階的なシミュレーション演習を通じて失敗前の学習を行う。課題は「一つの中国」政策による制約、統合ドクトリンやMOUの欠如、資源や法的制約などだが、これらは革新を必要とする。戦略的提言として、人道支援・災害救援(HADR)を多国間協力の入り口とし、政治的中立性と法的許容性を活かす。さらに情報共有、標準作業手順、物流拠点、非軍事機関の統合、共同訓練を制度化することを提案する。
 危機は必ず起こるため、分断や反応的対応ではなく、予測・吸収・適応するシステムを設計し、集団的レジリエンスと人間の安全保障を強化すべきだ。
 
(9)E氏の講演概要
 第一列島線における中国抑止を中心課題とし、最も危険な事態と最も可能性の高い事態の両面から備えが必要だ。特に焦点は相互運用性であり、衝突回避から統合指揮まで、韓国や日本は進展しているが台湾は依然として衝突回避レベルに留まっている点が問題だ。米国、日本、韓国は高度な通信・共同交戦能力を備える一方、台湾はリンク整備が遅れ、統合に時間を要するため、早急な改善が必要だ。
 最も可能性の高い中国の作戦は、軍事行動ではなくサイバー攻撃や経済戦キャンペーンによる社会的強靭性への挑戦であり、通信・エネルギー・金融システムが標的となる。台湾のエネルギー依存度は高く、特にLNG備蓄の脆弱性が指摘される。中国が海上輸送を妨害すれば台湾社会は重大な選択を迫られ、世界経済にも影響が及ぶ。対策としては、海上交通路や警戒センターの設立、LNGや通信ケーブル修理の共有、危機対応合意の構築が必要であり、米国が主導し台湾を先導した上で多国間協力を拡大すべきだ。最終的に、備えは軍主導ではなく文民主導で行われるべきだ。
 
(10)F氏の講演概況
 米国の国家安全保障戦略(NSS)や国防戦略(NDS)は台湾を重視し、現在進行中の「ドミナンスを戦うシナリオ」への対応を強調している。これに関連して「セブンアイズ(I)」と呼ばれる枠組みが有効である。それらは、インフラ、インテグレーション、インタラクション、イニシアチブ、インプロビゼーション、インテリジェンス、そして最も重要なインプリメンテーションが鍵である。
 日本の役割は、失われた30年を経て再び注目を集める中、戦略競争の中で信頼できるパートナーとして再生の機会を得ている。日本は災害対応や安全保障を「オールハザードアプローチ」として統合し、社会全体のレジリエンスを強化する方向へ進んでいる。これにより、海上安全保障、サイバー、災害救援などを包括的に結び付け、韓国やフィリピンとの協力とも共鳴する。
 重要なのは「Do it now」という即時実行のリーダーシップであり、議会や首脳レベルでの合意形成、ピアレビューや共同シンクタンクによる提言など具体的行動に移すことが求められる。日本は軍事大国ではなく「強靭性大国」として国際協力を主導し、安全保障リテラシーを国民に浸透させる必要がある。憲法上の制約はあるが、解釈の幅を活かし、スピードと実効性を重視した国際協力大国を目指すべきだ。
 
(11)G氏の講演概要
 韓国の防衛における役割を論じ、中国の影響工作の本質は政治介入ではなく、在韓米軍の無力化と撤退を狙うものだ。中国は第一列島線を防衛戦略の核心と位置づけ、近海防衛力を強化し、艦艇や空母を展開できる能力を持つに至った。これにより、台湾から沖縄へ延びる第一列島線は米中双方にとって複雑な戦域となり、韓国はその中央に位置するため戦略的に重要である。
 米韓同盟は条約に基づく強いコミットメントを持ち、憲法上の制約も少なく、地域防衛において決定的役割を果たし得る。韓国軍は50万人規模で地域最大の兵力を有し、75年にわたる共同演習で即応体制を整えてきた。今後は同盟を拡大し、フィリピン、台湾、日本、オーストラリアなどとの連携を強化すべきだ。また韓国は「民主主義の兵器廠」として信頼される存在であり、防衛生産基盤の拡大が求められる(注:韓国は155ミリ榴弾砲弾を100万発以上ウクライナに提供)。海軍力の遅れを補うため、済州島の海軍基地を国際的拠点化する構想も示され、中国への心理的抑止効果を期待する。韓国の役割は第一列島線防衛に不可欠であり、同盟国との協力拡大が地域安定の鍵である。
 
(12) 質疑応答
ア 中国の通信インフラへの脅威
 台湾有事の議論は中国による通信・インフラへの脅威から始まる。中国は台湾と太平洋を結ぶ海底ケーブルの位置を把握しており、有事にはデータフローの90〜95%を遮断する能力を持つと懸念される。そのため、宇宙・地上ネットワーク、迅速なケーブル修理、代替通信手段の整備が急務である。台湾の課題は軍種間の通信断絶であり、陸海空軍が統合されていない点が脆弱性となっている。米軍のように均衡した陸海空の体制を参考に、統合的な指揮通信体制を構築する必要がある。台湾を軍事演習や作戦計画に加える方法も議論され、共同生産や前線での製造能力強化が不可欠とされた。政治的障害は多いが、州兵とのパートナーシップや人道支援・災害救援訓練を通じて関与を拡大する道がある。
 
イ 台湾から自国民保護の必要性
 台湾有事における非戦闘員退避(NEO)作戦の困難さが指摘される。過去には米国の先制打撃に韓国・日本が反対した事例があり、現在は逆に中国や北朝鮮の攻撃下で外国人を退避させる必要が生じる可能性がある。台湾には多数の外国人居住者がいるため、国際的影響は甚大となる。加えて、武器供与の問題も取り上げられ、韓国企業が米国企業とジョイントベンチャーを組み、台湾やフィリピンに武器を供給する可能性が論じられた。しかし米国の技術制約や中国の反発が障害となるため、同盟国は米国より先に動くべきではないとの慎重論もある。
 
ウ 最も可能性の高いシナリオ
 軍事衝突ではなくサイバー空間を活用した経済戦争である。中国はエネルギー、通信、金融を標的に社会的レジリエンスを揺さぶる戦略を取ると予測される。これに備えるため、各国は協力して電力網やサプライチェーンの脆弱性を補強し、回復力を高める必要がある。ウクライナ戦争の教訓は、社会的回復力が軍事的勝敗を左右するという点であり、台湾も長期消耗戦に備え海上交通保護やエネルギー備蓄を強化すべきだと提言された。さらに、イラン戦争の経験から、中国のサプライチェーンを逆に遮断する積極的抑止策も検討すべきだとされた。
 
エ レジリエンシーには民間を加えた議論が必要
 官民総力を挙げて背景情報を共有し、企業が事業継続計画(BCP)に専念できる環境を整えることが重要である。パートナー諸国は互いの強みと弱みを理解し、NSCレベルで緊密な議論を行い、共同タスクを首脳のリーダーシップの下で実行する必要がある。金融問題も含めた包括的協力が不可欠であり、台湾、フィリピン、日本、韓国が連携して第一列島線防衛に取り組むべきだと強調された。
 
6 現地研修の概要
(1)日時
  2026年4月12日(日)10:00〜12:00
 
(2)研修先
  福和会2026民間防衛訓練
  協賛:台湾民団協会、桃園市民団協会、台中市民団協会、ぐおもS.T.A
  場所:永楽国民小学校(南投県中寮郷)、寺院、その周辺一帯
(注:台湾の民間防衛において、全土の小学校は救援活動の拠点に指定され、また各種寺院は支援活動の結節点となっている。中国は支援活動の弱体化を狙って、各種寺院への影響作戦を強化している。福和会の民間防衛訓練を小学校で行う理由は、影響作戦から人々の意識を高めることにある。)
 
(3)民間防衛訓練Civil Defense Joint Trainingの背景
  • 蔡英文総統のイニシアチブで始まった民間防衛は、国家防衛の不可欠な一部であり、社会維持maintain social functionを目的としており、途切れることのない兵站支援を確保し社会のレジリエンスを実現することを目指している。
  • 福和会の会員、理事の多くは、民間防衛、自主訓練、防災グループに積極的に参加してきたが、近年の地政学的リスクの高まりに対応し、戦争災害を防止し、頼総統の「力による平和を求めるpeace through strength」という理念に共鳴し、共産主義の脅威に対抗し、台湾を解放するための民間防衛関連活動への支援を開始した。
  • 研修には様々な郡や市から30以上の団体から参加した。参加者数は、各郡や市の人口比率に応じて割り当てられた。参加者は 全員、様々な職業の民間防衛ボランティアであり国軍の支援はない。参加者のほとんどは、防災要員、ETM1、TCCCの資格を保有しており、中には警察官や消防団員の資格を持つ者も参加している。
 
(4)訓練の概要
  • 中国軍が台湾に侵攻する36日前から着上陸当日までの期間を想定。侵攻の内容は、封鎖、空襲、第5列(敵対勢力の内部に紛れ込んで 諜報などの活動を行う部隊や人)の攪乱活動、水道や電気の破壊活動など
  • 民間防衛参加者の任務は次のとおり
    • 戦闘による死傷者casualtyの医療支援、軍隊から民間へ死傷者を受け渡し
    • 民間人の避難と後退の支援
    • 緊急医療基地の設定と民間人負傷者の手当て
    • 災害用シェルターの設置と管理
    • 地域の安全のための巡回とセキュリティ・インシデントへの対応
 
(5)研修内容
  • 第5列との戦闘行動を含む、民間防衛訓練を現地で視察
  • 実施責任者との意見交換
 
 
7 所見
(1)JFSSが福和会と協力する意義
 福和会(Formosa Republican Association、FRA)の核となる価値観は、「健全な方法で実用的に問題を解決すること、持続可能なビジネス思考で発展・進歩すること、個人の権利を尊重すること、すべての人に平等な機会を確保すること、市場の自由を擁護すること、政府の介入を減らすこと、過激主義と転覆行為に反対すること、そして共産主義全体主義に反対すること」である。
 会員は実業家、医者、大学教授など、いわゆる憂国の志が多く参加していることから、民進党との親和性が高い。なお、福和会の名誉会長李逸民氏は、賴清德総統に直接電話できる間柄である。
 この度のJFSS−FRAの協力覚書の締結は、福和会の理事長等がJFSS主催政策シミュレーションの研修を通じ、福和会側から提案で実現した。これは福和会がJFSSの活動に共鳴しての結果ともいえ、JFSSに対する期待は大きい。福和会は国防に関する様々な啓蒙活動に加え、防衛装備に関する企業展示会も実施していると聞く。今後の両シンクタンクの交流では、安全保障に関する幅広い分野での協力が期待できる。
 なお、賴清德総統への表敬訪問の席上、当方から協力覚書の締結と今夏に台北で実施する政策シミュレーションについて発言し、李逸民福和会名誉会長からNSCの協力が得られるように頼総統に申し入れた。
 
(2)シンポジウム
 日米比台の参加者から、第一列島線が「一つの戦域」であるとの認識が示された。これまで韓国は台湾有事への関心が低いと思われたが、任浩永陸軍大将、朱宰祐教授ともに、韓国の防衛は台湾有事と深く関連していることが示された。
 第一列島線防衛は、東シナ海と南シナ海への中国の覇権の浸透を食い止めることであり、台湾防衛は地理的にもその核心にある。総統府表敬時に、頼総統から米NDSを支持し、台湾は国防費を2020年までにGDP比5%まで増額する旨発言があった。関係国が連携していくためには、装備、運用、指揮統制など相互運用性や互換性について解決すべき課題がある。中国に対抗するためには多国間の連携が不可欠である。我が国も、戦略3文書の見直しに当たって、第一列島線防衛の概念を実践してことが望ましい。
 
(3)民間防衛訓練研修
 訓練の企画統制者が、民間ボランティア組織がかかる実地訓練を実施する理由を説明する行間に、国民党や台湾軍への不信感を垣間見た。曰く、国民党は民間人の保護を考えず、台湾軍にも民間人を守る意識が薄い。ボランティアが軍隊の支援を得ずに、独力で訓練をする理由がそこにある。
 戦争における民間人の保護、軍隊と民間人の離隔は国際人道法の重要な原則であるため、当方から、ウクライナやガザで赤十字国際委員会(ICRC)の活動を踏まえ、ICRCと連携しているかと尋ねたところ、台湾赤十字(台湾にはICRC代表部がなく、赤十字が実施)は国民党に属しており、民間防衛には関心がなく、これまでもそうした訓練は実施してこなかったとの回答があった。民間防衛が蔡英文政権のイニシアチブで始まった理由も、国民党(赤十字)の無作為があるのではないか。
 同じく蔡英文政権で始まり、賴清德政権が拍車をかけている全社会レジリエンスも、国民党と民進党の政治的な駆け引きとは無関係ではないと思われる。
 我が国では、民間防衛(civil defense)が国民保護と意訳されているように、ふつうの国々の民間防衛とは違った内容で発展してきた。したがって、今回の取り組みは極めて新鮮に映った。我が国政府は福和会の取り組みに学ぶべきである。また、我が国にも福和会のこうした活動に賛同する個人や団体は存在するはずであり、福和会の活動へオブザーバーとして参加することは有意義であろう。