何のための戦争なのか

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 この原稿を書いているまさに今、アメリカ・イスラエルとイランの戦争が終結するか否か、大詰めを迎えている。世界中の人々が一日も早い終戦を願っている。もともと何の大義もない戦争だった。
 アメリカとイスラエルが突如としてイラン攻撃を開始したのは、2月8日だった。何の関係もないが私の78回目の誕生日だった。以来、テレビのスイッチを入れると毎日トランプ米大統領の顔が真っ先に出てきてウンザリする。発言がクルクル変わり、戦争目的ですら何が本当か、本人も含めて誰も分からないほどだ。仏のマクロン大統領が「毎朝発言が変わるなら、もうしゃべるな」と叱責したのも当然だ。
 今年1月7日、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、外交・軍事における自身の権限への制約を問われたトランプ氏は、「たった1つだけある。自分の道徳心だ。私の意識だけが私を止めることができる」「私に国際法は必要ない」と語った。道徳心と最も縁遠いのがトランプ氏であり、言わば“無法者”宣言である。ホワイトハウスの記者会見で、「精神健康状態の検査を受けるべきだとの批判があるが」との質問までされる始末であった。
 世界一の超大国の指導者が、国際法を踏みにじって、他国の指導者や市民を惨殺したことを得意げに語り、小学校にいた子どもを多数犠牲したことに痛みを感じていない姿は狂気でしかない。だがトランプ氏の言いたい放題に対して、世界の指導者のほとんどが何一つ批判することも出来ないのが世界の現状である。ローマ教皇がカメルーンでの演説で「世界が一握りの暴君たちによって荒廃させられている」と発言したが、それがプーチンとトランプだとは名指ししなかった。
3月に高市早苗首相が訪米して日米首脳会談が行われた。取り敢えずは「何とか無事乗り切った」というのが大方の見方だろう。この後もトランプ氏は日本や韓国、NATO諸国などに注文を付け続けている。4月6日には、NATOだけでなく「日本も助けてくれなかった」という批判を繰り返した。こんな泣き言を恥ずかしげもなく告白するのは、孤立感に苛まれているからだ。
 誰の賛同もなく、勝手に戦争を始めたのはトランプ政権だ。ネタニヤフにそそのかされたのか、ベネズエラの“成功”に味を占めたのかは知らないが、自業自得だろう。日本はトランプ関税の強行でも、イラン戦争でも、経済や国民生活が大迷惑を蒙ってきた。日本国民はもっと怒ってよいのだ。
 国連憲章第1章目的及び原則の第1条2は、「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること」を明記している。今やこの戦後の大原則が壊されつつあるのだ。日本にとって米国は同盟国である。だが言いなりでは世界から蔑まれるだけだ。敢えて喧嘩をする必要はない。だがアジア諸国、NATO諸国、中東諸国と連携を強めることは、誰に遠慮することなく出来ることだ。「戦争反対」「即時中止」の声をこれらの国々と共に上げるべきだ。