安倍晋三氏は来年(2018年)9月に自民党総裁の改選期を迎える。今のところ対抗馬が見当たらないから総裁の三選を果たすのは確実だろう。そうなると安倍氏は佐藤栄作や桂太郎を抜いて日本の最長期政権を記録することになる。今年1月の解散説は跡形もなく消えて、解散は来年秋までない様相になってきた。
こうなってくると政治運営が最も厳しいのは野党第1党の民進党である。国際情勢の変化は大地震が起こって津波が押し寄せるというような大激変にはならない。そこで民進党はあと4~5年のうちに、政権を担える政党に脱皮を遂げる必要がある。安倍氏の最後の総選挙で逆転するためには居住まいを正して政党の芯棒を見せるしかない。
これまで犯してきた失敗を反省し、新しい不動の政策を準備しておくしかない。
まず民進党の前身、民主党が犯した最大の罪は唯一の同盟国、米国のオバマ大統領を怒らせてしまったことだ。同盟国の大統領に昼食をとる申し出さえ断られるのは前代未聞のことだ。そうなったのは党内に非武装中立の勢力を抱え、護憲を標榜する共産党と組んでいるからだろう。そもそもなぜ鳩山氏のような人物が党首に選ばれたか。党内に軍事や安全保障問題を議論するのを避ける風潮がある。そこで「鳩山」という名前で国民を引っ張れば良いとでも思ったのだろうか。岡本行夫氏が現職の首相に、日米安全保障条約の趣旨や「抑止力」の意味を説明に行ったというのだから話にならない。
それに比べて安倍氏は最初の国会で新安保法を制定し、集団的自衛権の行使を可能にした。尖閣が危いという正にその時、民進党、共産党は“戦争法反対”と叫んでいた。日本の国会では、野党は常に与党の方針に反対すれば良いと思い込んでいるようだが、欧米各国、どこを見てもこのような発想をする政治家・政党はない。イタリア共産党は米ソ冷戦でソ連が負けたのを見て、国民に不明を詫び、党を解散した。それ以前も国防軍を認めNATOへの参加を認めるほど現実的だった。
非武装・中立などという宗教的念仏を唱えて、「周囲に脅威はない」と叫ぶのは、さながら邪教だ。大声を上げても人に信用されず、かつて140議席あった旧社会党は党名を変え衆院1議席にまで落ちた。
今、共産党は旧社会党の意志を継いで「護憲」を叫ぶようになった。全野党共闘を組んで数合わせをすれば、自民党に勝てる選挙区が30~40出てくると宣伝している。
民進党の蓮舫指導部は共産党に媚びて原発廃止と護憲にしがみついているようだ。原発30年廃止を巡って支持母体の連合から見放されそうになっている。最近では安倍首相が経営者を集めて賃上げを要求しているせいか、電気労連の政党支持率は自民23%、民進は18%だという。民進党は共産党を手放したくないばかりに味方を失いつつある。
一方で、維新は地方分権と教育改革を柱に掲げて憲法改正に向かっている。
(平成29年3月2日付け 静岡新聞『論壇』より転載)