森友学園をめぐる安倍晋三首相夫妻の関りは、証人喚問された同学園元理事長の籠池泰典氏の証言で、およそ霧が晴れたのではないか。民進党など野党は直接の働きかけがなくとも役所が首相の意向を忖度(そんたく)して便宜を与えたに違いないとして、財務官僚など関係者を喚問すると息巻いている。怪しい噂を10ほど集めて、一つの“事件”をこしらえようとの思惑のようだが、安倍夫妻が事件に引っ掛からないことは明瞭になった。これ以上、国会を弄ばないで貰いたい。
籠池氏は自らの小学校を「瑞穂の国小学院」と名付け、安倍晋三氏を校長にして、断られると夫人の安倍昭恵氏にすげ替えた。根っからの安倍晋三信者の如く見える。しかし裏側では安倍ネームを徹底利用して学校事業を成功させたいとの打算も窺える。
籠池氏は証人喚問の場で、国有地を小学校用に払い下げを受けた際、当初8億円だったのが「地中からゴミが出る」と文句を言ったところ、いきなり「1億3400万円に引き下げられたのに驚いた」旨を述べた。これに先立って籠池氏は昭恵夫人に国有財産払い下げ問題を何度か相談している。その際の近畿財務局とのやり取りは昭恵夫人付の官僚が行って、「どうにもなりません」旨の返答を返している。籠池氏の巧妙な点は付き人とのやり取りと土地の値下げとがいかにも関連があるかのように言っていることだ。
私も役所が忖度したのかと思ったが、汚染土が混じると土地の値段は一気に下がる。東京都の豊洲は東京ガスから559億円（10万5000平米）で買い取ったが、土壌汚染が判明して東京都は東京ガスに79億円を払わせたほか、自前で400億円も払っている。汚染度にもよりけりだが、土壌汚染処理は土地価格にも匹敵するほど高いのだ。
100万円の寄付をめぐっては物証というものがない。安倍首相は「私や家内が関与していたら議員も辞める」と大見得を切った。一方の籠池氏は100万円を貰う時、夫人は人払いし「人に言わないでくれ」と言ったと言う。小学校への寄付金を募る時に籠池氏は「安倍晋三校長」の名で集めた。強く断られて「すぐ止めた」と言っているが、それから2年後に同じ封筒で募集がきたケースがある。昭恵夫人と籠池夫人のメールのやり取りを見たが、昭恵夫人が金集めに関わっている気配は全くない。
籠池氏は何故100万円貰ったウソを世間に広めたのか。これを喧伝することによって追随者を増やそうとしたのだろう。
森友学園は国土交通省に補助金を申請した際には、校舎建築費は23億8400万円。関西エアポートに騒音対策の助成金を申請した際には15億5520万円。大阪府の私立学校審議会に提出した書類には7億5600万円と三者三様だ。昭恵夫人には世の中には100万円貰ったという人や、10万円払ったという人もいるから「気を付けて」と言いたい。
（平成29年3月29日付静岡新聞『論壇』より転載）
