10月22日総選挙
―保守系二大政党制の始まりとなるか―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 日本の政治は一強多弱体制が続いて、反対側が政権をとるのは困難と見られてきた。本来、小選挙区比例代表並立制は二大政党を形成し、政権交代するシステムである。自・公がほぼ安泰という状況が打破できないとすれば、反対側の党が政権をとれない問題を抱えていると考えるべきだろう。
 反対側の党は社会党、社民党、民主党、民進党と変遷してきたが、民主党が1回政権をとった以外に大政党になるチャンスは来なかった。政権党に不可欠なのは安全保障政策である。安倍自民党がこのところ衆、参両選挙で4回続けて勝っているのは安保体制が信頼されているからだと断じていい。
 野党が勝てない悲劇は集団的自衛権の行使と言えば「戦争につながる」、特定秘密保護法の制定と言えば「戦争中の治安維持法の再来」と軍事問題に極端な反応を示してきたことだ。この極端な左翼偏向は非武装=護憲を掲げる共産党と密接に結びついている。
 民進党について言えば、前原誠司氏は安保問題では専門家だから、この人が政権をとることには反対が少なかろう。但し、同じ党に共産党と結びついている左翼分子が存在すると、いつ政権が鳩山由紀夫、菅直人の時代に逆戻りするかも知れないとの不安が生じる。政権党になってくれと一票を投じても、下手をすると共産党と同じ派が天下をとるかも知れない強烈な不安を抱かせる。その心理が投票に踏み切れなかったのである。
 前原氏は左右合体した党のあり方を批判して「党の解散」を提唱したことがある。解散したのち、保守と左派が別々に立党する。自民党、民進党保守、民進党左派の3つが争うことになれば、保守派が台頭してきて、いずれ自民党との二大政党制になると前原氏は考えていた。
 9月に民進党の党首になった前原氏は、自分が中心なれば、党全体を保守系に染め上げられるかも知れないと一度は思ったに違いない。しかし「民進党」という名前自体の信用が失墜して使いものにならない。
 一方で小池百合子東京都知事が「希望の党」という新党を設立した。安保問題、憲法改正問題において旗幟鮮明である。前原氏はこの人気にあやかろうと「合流」を申し込んで合意したが、小池氏にとっては掲げた旗に反対する人を入れたのでは、かつての民主党、今の民進党と同じである。「排除の論理」に固執するのは当然だ。排除された左派の枝野氏は「立憲民主党」を結成し、民進党は分裂した。
 およそ政党である限り、国会で「まず何でも反対」を打ち出すのがおかしい。民進党は自社対決時代の手法さながらに「まず反対」が原点にある。日本維新の会は是々非々スタンスである。これを見て民進・共産党側は「政府の補完勢力」などと非難しているが、これこそ議会政党の生き方だ。小池氏は「維新」の松井代表と“候補者調整”を約束した。これが第2の保守党誕生のきっかけになるだろう。労働組合の集合である「連合」が政治問題に口を出すのは論外だ。
(平成29年10月4日付静岡新聞『論壇』より転載)