先週、韓国法務部が発表した韓国内の不法滞在外国人に関する統計によると、今年7月時点での総数が何と88,743人に上るという。過去9年間で3.5倍に膨れ上がり、韓国に滞在する外国人の実に11.6%(9人に1人)が不法滞在者だというから驚きである。国籍別にみると中国人が圧倒的に多く、特にビザなしでの滞在が認められている済州島では、一日当たり平均18人の「中国人観光客」が行方をくらましているという。この島だけで年間6,500人近い中国人が失踪している計算になる。中国人絡みの犯罪も増え、当局は頭を抱えている。
余りの惨状に韓国当局に同情したくなるが、実はそうもいかない。日本においては韓国人の不法滞在者が最も多いのである。我が法務省の統計によると、今年7月1日現在で、不法残留者の総数が64,758人、そのうち20%を超える13,083人が韓国人である。
国籍別の第2位は中国人で8,416人というから、韓国は我が国では堂々の不法滞在No.1の国なのである。興味深いのは、韓国人と中国人の不法滞在者を男女比でみると、韓国人の場合は60%が女性、中国人の場合は60%が男性で、好対照をなしていることである。この違いがどこから来るのかを調べると、韓国人の大半が「短期滞在」(つまり観光)で来日してそのまま日本に居続けているケースで、女性の就労が目立つ(注:同じパターンが不法滞在者総数第3位のタイ人に見られる)。これに対して、中国人の場合は、技能実習生と留学生の失踪というケースが圧倒的に多い。困ったものである。
実は、日本にはかつて「不法滞在天国」と言われた時代があった。今から20年以上前のバブル末期で、ピークの1993年には不法残留者の総数が30万人近かった。その後、取り締まりの強化、そして韓国・中国の経済状況の改善・向上もあって劇的に減少し、2014年1月時点では6万人を下回った。ところが、ここ3~4年、ベトナム人の技能実習生と留学生の失踪が増え、このため、総数も漸増、先述の通り、今年7月には64,758人に達したという訳である。
不法滞在の取り締まりは難しい。発覚しても出国命令か国外退去命令を受けるだけで、よほど悪質でなければ犯罪者として懲役・禁固もしくは罰金の刑に処されることはない。普通は再度の入国が一定期間拒否されることくらいである。不法就労する者は発覚するまでに出来るだけ稼ぎ、国外退去を命じられたら帰国後に家の一軒でも建てようという魂胆である。中には難民申請して日本に滞在・就労し続けようという不逞な輩もいるという。近年は、観光促進を目的とした査証免除(ビザなし渡航)が大幅に認められる傾向にあり、このため、不法残留者の数はさらに増え続け、「不法滞在の日中韓トライアングル」はますます強固なものになりそうである。