米国のティラーソン国務長官は北朝鮮との対話に固執しているようだ。一発勝負が好きなトランプ大統領は、ティラーソン氏が交代すれば、直ちに北朝鮮成敗に突入するのではないか。トランプ氏は北朝鮮が米国まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)や核弾頭を持つことは許さないと何度も明言している。北朝鮮はこの2つを持つことによって米国と対等に対話をしたいと譲らない。譲るに譲れない喧嘩は最早、罵り合いのレベルに達している。「チビ、デブ」と言えば相手は「老いぼれ」と返す。喧嘩の常道として、こうした罵り合いにまで至れば、殴り合いに発展するのは時間の問題だ。
イラク戦争は9.11同時多発テロで怒ったブッシュ大統領が、あと先考えずにイラク成敗を断行したため、サダム・フセインの後の政権作りに四苦八苦した。まして今回は隣国の中国と折り合う手立てをした後でなければ手を出せない。
習近平主席は隣に米国の息のかかった政権が出現することは絶対に避けたい。米国は中国に北への石油の供給を止めろと強く言っているが、中国は北が瓦解したり自滅したりする姿を望んでいない。
同じ社会主義体制で金正恩の代わりに暗殺された金正男の長男が後を継ぐような形なら容認できるだろう。この点で米中が既に一致しているという情報もある。
11月29日に発射された「火星15」と呼ばれるICBMはロフテッド軌道(大気圏外)で打ち上げられて、北側は「成功した」と報じている。米・韓側は「大気圏再突入時に分解した」と見ているが「1年以内には完成するだろう」と予想している。喧嘩している相手の武器が完成するまで漫然と待つバカはいない。米側は何かきっかけを作って、一挙に北叩きに出るだろう。
北は通常ロケット攻撃でソウルを全滅させると豪語している。マティス国防長官も当初、「犠牲者が40万人~100万人単位で出るから戦争はできない」と明言していた。しかし最近、死傷者の出ないやり方も「ある」と答えている。
どういうやり方があるかを示唆するのが、12月初旬に行われた米韓合同軍事訓練だ。敵のレーダーに探知されにくい米最新鋭ステルス機「F22」6機や「F35A」6機に加えて、垂直離着陸が可能な「F35B」12機を含め、米韓両軍から計230機が投入された。過去最大規模の訓練を敢えて行ったのは、実戦を確認したかったからだろう。北側に何十キロかずれて行えば、実習ではなく敵陣破壊となる。ソウルを狙うロケット砲陣地を一瞬にして吹き飛ばすし、地中に這う指揮命令系統はバンカーバスター(地中貫通爆弾)によって一挙に破壊できる。破壊した後に特殊部隊を降下させて金正恩の消息を確認して引き揚げる。核施設の管理とミサイル施設は米中共同で行う。
(平成29年12月13日付静岡新聞『論壇』より転載)