慰安婦問題をめぐって日本と韓国は2015年12月の首脳会談で、「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。昨今、慰安婦問題の韓国側の言い分は、日本が謝罪しなければならないことを「行った」という前提で語られているが、この前提は根本的に間違っている。
日本が日清戦争の末に韓国を併合したのは1910年から45年まで。この間日本は韓国に大規模な投資を行ったが、韓国独立に当たって65年、日韓基本条約を結び、5億ドルの経済協力を行った。これで在日韓国人の地位を保証するとともに国造りの資金も提供したのである。これで両国間に一切の貸し借りがないことは米国も認めている。韓国民で不満があれば自国の政府に補償を求める仕組みだが、時の朴正煕大統領はその資金の殆どを公共投資や鉄鋼産業の創設に投下した。この国造りのやり方は国際的に高く評価された。
未払いの賃金などがあったとすれば、韓国政府が対応すべきものだ。ところが韓国の裁判将は韓国政府に対して日本との交渉を「熱心にやれ」という見当違いの判決を出している。もっと見当違いなのが慰安婦問題だ。
日本の中学の教科書に「従軍慰安婦強制連行」という単語が載るようになった。左翼学者の捏造語だが、戦時中慰安婦として軍が婦女子を強制連行した事実はなかったと明らかにされて「従軍慰安婦」だけが残った。ところがこれも軍の資料全部を当たっても証拠はなかった。朝日新聞は軍が「軍の名前を語って婦女子を集める業者があるから注意せよ」との主旨の通達を取り上げて「軍が関与した」と騒いだものだ。これは軍の地方政府への注意を呼び掛けたものであって、慰安婦募集に関わったわけではない。当時、慰安所は公認の職業であって、日本では1958年に廃止された。従って問題にさわるとすれば、タダ働きとか料金の踏み倒しである。1941年にビルマ(現ミャンマー)の基地が落ちて米軍が残った慰安婦約20名に聞き取り調査をした。その資料は米国防総省が保管しているが、慰安婦に聞き取り調査した軍人が「君たちの給料はわが司令官より多いんだね」と語った部分がある。
公認の職業で料金が払われているとすれば犯罪ではない。それでも韓国政府があまりにもうるさいものだから、河野洋平官房長官(当時)が「河野談話」を発し、一件落着にしようとした。ところが安倍時代にまたも蒸し返された。安倍首相は10億円を拠出して「不可逆的解決」と念を押し、米国を証人に立てた。
「河野談話」の罪は、あたかも本人の意思に反して軍が強制的に選択した事実があるかのように日本人にまで思わせてしまったことだ。文在寅大統領は「国民感情が納得しない」と無理押しをしようとしているが、訳の分からない国民感情を戒めることもできない大統領とは一緒に仕事はできない。
韓国人は各地に慰安婦像を立てているが、これによって自らの国が優位に立つと錯覚しているらしい。
(平成30年1月17日付静岡新聞『論壇』より転載)